“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
ラングロワ侯爵家の大奥様に仕えて三年経った。私は十七歳となる。相変わらず、父は婚約者探しに苦労しているようだ。

私の結婚話は、いっこうに浮上しない。それどころか、二つ年上の十九の姉ですら、見つからないと話していたくらいだ。

女性貴族の結婚適齢期は、十五歳から十八歳まで。十九歳となった姉は、立派な嫁(い)き遅れだ。

可能であれば良縁を。父は姉妹の幸せを願い、今日も結婚相手探しに走り回っている。

頑張れと応援していたが、どこか他(ひ)人(と)事(ごと)のように思っていた。

私はラングロワ侯爵家の大奥様にお仕えすることが楽しかったし、やりがいも感じていたからだろう。今さら結婚して、他所の家に行くなんて考えられない。

そんな気持ちを伝えたら、ラングロワ侯爵家の大奥様はとんでもないことを言ってくれる。なんと、ミシェル様と結婚すれば、侯爵家にずっといられるじゃないと。

この私が、ミシェル様の妻になると?

平々凡々な目鼻立ち、身長は小さくなく大きくもなく。ショコラブラウンの髪に紫色の目は少しだけ珍しいけれど、華やかなミシェル様の美貌の前では霞んでしまう。そんな私があの美しいミシェル様の奥方になるなんてありえない。
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