“自称”人並み会社員でしたが、転生したら侍女になりました
私の個人的な残念スペックはさておいて、家柄もまったくつり合っていなかった。

ラングロワ侯爵家の大奥様は、ミシェル様は次男で、結婚相手に家柄は求めない。だから、考えてくれないかと熱心に頼まれる。

しかし、しかしだ。この私が、ミシェル様の妻に相応しい女だとは欠片(かけら)も思えなかった。

ラングロワ侯爵家の大奥様には後生ですからと、床に頭を付けて辞退する。「どうしても、ダメ?」と聞かれたが、「難しいかと」と答えるしかなかった。

なんでも、ミシェル様が結婚するほどよいタイミングは、今しかないらしい。来月には、王太子妃候補の公爵令嬢アリアンヌお嬢様の専属護衛騎士となるようだ。以後は、アリアンヌお嬢様の結婚したあとにしか、結婚できないとのこと。

ここで、結婚相手に指名された理由が腑に落ちる。都合のいい相手が、私以外いなかったのだろう。

ほんのちょっとだけ、私はラングロワ侯爵家の大奥様やミシェル様にとって特別だったのではないのかと考えたが、まったくの勘違いだったわけだ。

ふっきれた私は、父に結婚相手は探さなくてもいい、働くことに人生の喜びを見出していると宣言した。
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