ビター・シュガー
その仕草の一つ一つに、翻弄されそうな俺。
でも…そう簡単に事が進むわけがないことは重々承知だ。

だから、俺はわざと足を組んで、彼女を斜めに見ながら横柄な態度を取る。


「んじゃ。始めっか」

「ん」

「今どこが分かんねぇの?」

「んと、ここ」

「…これはこの前教えたろ。二度目はねぇって言ってんだろーが。いつも」


ぽこん


薄いテキストを丸めて静かに頭を叩くと恨めしそうに口を尖らせる。


「いたーい」

「痛くねぇだろ」

「痛いもん」

「…はぁ…わーかった。んじゃ、ほら」


ぐしゃぐしゃ


指通りのいい髪を少しだけ乱暴に、だけど愛情を持って掻き乱してやれば、彼女はすぐに怒るのを諦める。


「しょーがないなぁ。淳史さんって、何気に構ってちゃんだよねぇー」


ふふふ、と微笑む彼女を抱き締めたい。
でも、俺は曖昧に笑みを投げかけて、


「だーれがだよ。お前さんからしたら俺なんかおっさんだろー?それが構ってちゃんとか…気持ち悪くねぇの?」



とだけ言った。
…そう言って、自分で傷付いた。


俺もまだまだ青いなぁ…。
こんな気持ちに押し流されてるようじゃ、先が思いやられる…。


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