ビター・シュガー


「え?なに?なに?!」

「”先生”が、みーっちり仕込んでやるから、覚悟しとけ」

「やだ!それは!あ、そ、そうだ!今までの力試しに、次のテストまで自習するから!ね?いいでしょ?」

「あっそ。じゃあ、それでもいいよ。けど、満点取れなかったら、お仕置きな」


ここであまり深追いするのは得策じゃないことはよく分かってる。
だから、俺はパッとその場を離れて、にっこり笑顔を彼女に向けた。


「お仕置き?!」

「そ。お仕置き」

「ど、どんな?」

「すんごいやつ」

「……淳史さんキャラ変わってる」


あわわと、手にしたテキストを胸元で抱え込む彼女を上から覗き込んで、


「だーかーら。頑張って?」


キスが出来そうなくらいの距離で耳元にそう囁いた。
彼女はそれがくすぐったかったのか、身を捩りながらもじもじと下を向いて、小さく「…はい…」とだけ呟く。


もう、早く…なんて言わない。
そんなに早く大人にならなくていいから。
ゆっくりお前のペースでいいから。

じわりじわりと、少しずつ。
俺のことをその心に刻んで、その心に触れさせてくれ。


< 15 / 31 >

この作品をシェア

pagetop