ビター・シュガー
「え?なに?なに?!」
「”先生”が、みーっちり仕込んでやるから、覚悟しとけ」
「やだ!それは!あ、そ、そうだ!今までの力試しに、次のテストまで自習するから!ね?いいでしょ?」
「あっそ。じゃあ、それでもいいよ。けど、満点取れなかったら、お仕置きな」
ここであまり深追いするのは得策じゃないことはよく分かってる。
だから、俺はパッとその場を離れて、にっこり笑顔を彼女に向けた。
「お仕置き?!」
「そ。お仕置き」
「ど、どんな?」
「すんごいやつ」
「……淳史さんキャラ変わってる」
あわわと、手にしたテキストを胸元で抱え込む彼女を上から覗き込んで、
「だーかーら。頑張って?」
キスが出来そうなくらいの距離で耳元にそう囁いた。
彼女はそれがくすぐったかったのか、身を捩りながらもじもじと下を向いて、小さく「…はい…」とだけ呟く。
もう、早く…なんて言わない。
そんなに早く大人にならなくていいから。
ゆっくりお前のペースでいいから。
じわりじわりと、少しずつ。
俺のことをその心に刻んで、その心に触れさせてくれ。