ビター・シュガー
それから、テスト当日まで…リビングで会う以外は、あまり接触しないようにした。
ばったり会ったとしても、軽く挨拶を交わす程度。


少しでも、彼女に意識してもらえるように、狡い駆け引きをしてることは分かっているけれど、時折何か言いたげな顔をする彼女に、微笑んで、


「テスト頑張れよ」


と、頭をぽんぽんと撫ぜてから俺はそっと部屋に戻る、を繰り返していた。


少し前までは、まるでなんでもないことのように、俺の部屋に入り浸って、2つある本棚から「これはなに?」「あれは?」と無邪気に聞いてきたり、人のベッドで無防備に寝たりしていたのに。


さり気なく提案したドライブデートに、何かを感じたのか、彼女は自分から入り込んでくることは一切なくなった。


俺は、紫煙を燻らす。


こんなに、人を愛しい、恋しいと思ったのは…元カノの悠里の時よりも、もっと激しい感情かもしれない。


…なんだかんだと言って、忘れられずにいたと思っていたのに…。
あんなに、傷付いていたのに…。

人は、やっぱり挫折抜きじゃ生きていけないもんなんだな。


俺は、そこまで考えて手元の灰皿に短くなった煙草をきゅっと押し付けると、ソファーに身を委ねて、ほんの少しだけ目を閉じた。


まるで、ここにいた彼女の残像を惜しむかのように…。


満点だったら、ドライブして自分の想いを伝えようか、そんなことを思った。

だけど…もしもそうじゃなかったら…。
自分は一体どうするつもりなんだろうか。


この燻りつつある想いを、どう浄化させるつもりなのか…。


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