ビター・シュガー
ふとそこで、こんこんとドアを叩く音がした。


誰だ?
こんな時間に?


時計の針はもうすぐ0時を回る。
今夜は金曜日。
他の部屋の主ならば、それぞれの時間を楽しんでいるだろうに。


そう訝しげに思いつつ。


「どうぞ〜」


と、少しだけ間の抜けた声で告げると、控えめにドアが開く。
俺は、そこに現れた人物を見て、驚いた。


「は?桃?」

「う、ん」

「お前な、こんな時間に男の部屋にくるのは…」

「淳史さん!」

「な、なんだよ?」


どうも、何時もとは違う彼女の表情に、更に驚いて、聞き返すと彼女は困ったように、俺を見つめてきた。


「怖い…」

「…何が?」


心底怯えた顔。
そんな上目使いされて、落ちない男はいないだろって、今はそうじゃなくて…!

「月曜日のテスト…」

「あ、あぁ…そんなことか…俺はてっきり…」


誰かに襲われかけたのかと思った。
けど、それは口には出さなかった。
何故なら、本当に今にも泣きそうな顔をしてる彼女が目の前にいたから。

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