8月8日の約束…
あの日 僕は咄嗟に嘘をついた
たこ焼き
「別にいいけど、どこに行きたいの?」
悠理は訊いた。
『うーん…。』
遥香は少し考えてから、
『東京ディズニーランドとか!』
と、言った。
「あそこ、東京じゃなくて千葉…。」
と、悠理は苦笑した。
『あ、そうだった。』
と遥香も納得して、
『じゃ、じゃあ、東京ドイツ村は?』
と訊いた。
「それも千葉。」
と悠理は笑った。
『じゃ、じゃあ、東京湾フェリーは?』
と、遥香が訊いた。
━━取り敢えず、《東京》と付くものを言ったようだ。
「それ、神奈川と千葉を行き来してる船だよ。」
と、悠理は答えた。
『えっ、そうなの…。
千葉って東京なの?』
と、遥香は訳が分からなくなって来た。
「千葉は千葉だよ。
《東京》って付く施設も多いみたいだけど。」
と、悠理は言った。
『じゃあ、お台場は?』
と、遥香が訊いた。
「お台場は東京だけど…。
お台場の何処に行きたいの?」
と、悠理は聞き返した。
『たこ焼きミュージアム!』
と、遥香は元気よく答えた。
「!?」
悠理はハッとしてから、
「た…こ…や…き…。」
と、呟くように言った。
『あれ?』
遥香は何かに気付いたように、
『もしかして…たこ焼き…苦手…?』
と訊いた。
「ごめん…ちょっと…苦手で…。」
悠理は申し訳なさそうに言った。
『ううん、気にしないで。』
遥香は言ってから、
『お台場には、他にも遊ぶ所あるし。』
と、微笑した。
━━そして二人は、お台場の別な場所で遊ぶ約束をした。
電話を切ったあと、悠理は俯いた。
「ごめんね…遥香…。」
悠理は呟くように言って、
「ホントは…私も…たこ焼き…好きだったんだ…。」
と薄ら涙を浮かべた。
「藤吉聖来(ふじよし・せいら)です。
よろしくお願いします。」
と言って、その少女は頭を下げた。
━━2015年の秋の出来事…。
ここは、悠理が通っている中学校…。
━━藤吉聖来、中学二年生。
後ろで一本に束ねた黒髪に、切れ長の目が特徴の美少女だ。
家庭の都合で、大阪から東京に転校して来た。
━━席は、悠理の隣になった。
「私、鈴本悠理、よろしくね。」
と、悠理は言った。
「よろしく。」
と、聖来が答えた。
この頃の悠理は、明るく誰とでも仲良くなれる少女だったので、すぐに聖来とも仲良くなった。
━━ある日の学校の帰り道。
「うち、たこ焼き、めっちゃ好きやねん。」
と、聖来は笑った。
「私も好き。
学校の近くに、美味しいたこ焼き屋あるよ。」
と、悠理が答えた。
「でも、それは“関東”のたこ焼きやろ?」
と、聖来は訊いた。
「関東?」
と、悠理は首を傾げた。
「あんな。」
聖来は少し間を置いて、
「関東のたこ焼きは、外側がカリッとして、中がトロトロの《カリトロ》なんやけど、関西のたこ焼きは、外側がフワッとしていて、中がトロトロの《フワトロ》やねん。」
と、説明した。
「へぇ、美味しそう。」
と、悠理は興味津々の様子。
「めっちゃ、美味しいで。」
と、聖来は自慢気に、
「関東のたこ焼きみたいに、壁にぶつけても壊れへんようなたこ焼きは、たこ焼きちゃうわ。」
と言った。
「何それ、面白い例えだね。」
と、悠理は笑った。
「親戚のおばちゃんが言っとった。」
と、聖来も笑った。
「フワトロのたこ焼きかぁ、食べて見たいなぁ。」
と、悠理は言った。
「ほんなら、ウチらが大学生くらいになったら、大阪に旅行せぇへん?」
と、聖来が言った。
「うん、行こう。」
悠理は聖来を見て、
「大阪案内してくれる?」
と訊いた。
「まかしとき。」
と、聖来は答えた。
そして二人は笑った…。
悠理は訊いた。
『うーん…。』
遥香は少し考えてから、
『東京ディズニーランドとか!』
と、言った。
「あそこ、東京じゃなくて千葉…。」
と、悠理は苦笑した。
『あ、そうだった。』
と遥香も納得して、
『じゃ、じゃあ、東京ドイツ村は?』
と訊いた。
「それも千葉。」
と悠理は笑った。
『じゃ、じゃあ、東京湾フェリーは?』
と、遥香が訊いた。
━━取り敢えず、《東京》と付くものを言ったようだ。
「それ、神奈川と千葉を行き来してる船だよ。」
と、悠理は答えた。
『えっ、そうなの…。
千葉って東京なの?』
と、遥香は訳が分からなくなって来た。
「千葉は千葉だよ。
《東京》って付く施設も多いみたいだけど。」
と、悠理は言った。
『じゃあ、お台場は?』
と、遥香が訊いた。
「お台場は東京だけど…。
お台場の何処に行きたいの?」
と、悠理は聞き返した。
『たこ焼きミュージアム!』
と、遥香は元気よく答えた。
「!?」
悠理はハッとしてから、
「た…こ…や…き…。」
と、呟くように言った。
『あれ?』
遥香は何かに気付いたように、
『もしかして…たこ焼き…苦手…?』
と訊いた。
「ごめん…ちょっと…苦手で…。」
悠理は申し訳なさそうに言った。
『ううん、気にしないで。』
遥香は言ってから、
『お台場には、他にも遊ぶ所あるし。』
と、微笑した。
━━そして二人は、お台場の別な場所で遊ぶ約束をした。
電話を切ったあと、悠理は俯いた。
「ごめんね…遥香…。」
悠理は呟くように言って、
「ホントは…私も…たこ焼き…好きだったんだ…。」
と薄ら涙を浮かべた。
「藤吉聖来(ふじよし・せいら)です。
よろしくお願いします。」
と言って、その少女は頭を下げた。
━━2015年の秋の出来事…。
ここは、悠理が通っている中学校…。
━━藤吉聖来、中学二年生。
後ろで一本に束ねた黒髪に、切れ長の目が特徴の美少女だ。
家庭の都合で、大阪から東京に転校して来た。
━━席は、悠理の隣になった。
「私、鈴本悠理、よろしくね。」
と、悠理は言った。
「よろしく。」
と、聖来が答えた。
この頃の悠理は、明るく誰とでも仲良くなれる少女だったので、すぐに聖来とも仲良くなった。
━━ある日の学校の帰り道。
「うち、たこ焼き、めっちゃ好きやねん。」
と、聖来は笑った。
「私も好き。
学校の近くに、美味しいたこ焼き屋あるよ。」
と、悠理が答えた。
「でも、それは“関東”のたこ焼きやろ?」
と、聖来は訊いた。
「関東?」
と、悠理は首を傾げた。
「あんな。」
聖来は少し間を置いて、
「関東のたこ焼きは、外側がカリッとして、中がトロトロの《カリトロ》なんやけど、関西のたこ焼きは、外側がフワッとしていて、中がトロトロの《フワトロ》やねん。」
と、説明した。
「へぇ、美味しそう。」
と、悠理は興味津々の様子。
「めっちゃ、美味しいで。」
と、聖来は自慢気に、
「関東のたこ焼きみたいに、壁にぶつけても壊れへんようなたこ焼きは、たこ焼きちゃうわ。」
と言った。
「何それ、面白い例えだね。」
と、悠理は笑った。
「親戚のおばちゃんが言っとった。」
と、聖来も笑った。
「フワトロのたこ焼きかぁ、食べて見たいなぁ。」
と、悠理は言った。
「ほんなら、ウチらが大学生くらいになったら、大阪に旅行せぇへん?」
と、聖来が言った。
「うん、行こう。」
悠理は聖来を見て、
「大阪案内してくれる?」
と訊いた。
「まかしとき。」
と、聖来は答えた。
そして二人は笑った…。