8月8日の約束…
悲しみを越えて…
悠理の頬を涙が伝った…。
聖来との別れから1年半程経ったが、哀しみは消えなかった。
人と関わる事が怖くなった。
遥香と出会い、また人と関わる事に前向きになれた。
しかし、《大阪》や《たこ焼き》など、聖来に関係するような言葉は、悠理をまた哀しみの海に引きずり込む。
「私は…幸せになっちゃ…いけない…気がする…。」
悠理は呟くように言った…。
《そんな事あらへん…》
《ウチは大丈夫やから、悠理は幸せになってな…》
━━どこからか、聖来の声がした気がした。
「!?」
悠理は辺りをキョロキョロ見渡した。
━━当然、聖来はいない。
そして悠理は、何かを思い出したように、チェストから手帳を取り出した。
アルバイト代で買った、四段のチェストだ。
プリクラが沢山貼ってある手帳だ。
━━悠理は手帳を開いた。
聖来と二人で撮ったプリクラが沢山貼ってあった。
二人共、楽しそうに笑っている。
「聖…来…。」
悠理は呟くように言うと、手帳を抱き締めて泣いた。
《プルルルル》
悠理の携帯電話が鳴った。
名前ではなく番号が出ているので、登録のない番号のようだ。
悠理は涙を拭った。
「も…もしもし…。」
悠理は、恐る恐る電話に出た。
『鈴本悠理さんの…携帯で間違いないですか?』
と、受話器の向こうから女性の声がした。
━━相手の女性は悠理の事を知っているようなので、間違い電話ではなさそうだ。
「はい。」
悠理は不安そうに答えた。
『悠理ちゃん…。』
女性は少し間を置いて、
『聖来の…藤吉聖来の母です。』
と言った。
「!?」
悠理は驚きを隠せなかった。
電話の相手は、藤吉聖来の母の藤吉眞衣(ふじよし・まい)だった。
悠理は眞衣とは何度か会った事があった。
『突然、ごめんなさいね…。』
眞衣は謝ってきた。
「い、いえ…。」
悠理は答えた。
『実は、悠理ちゃんのお母様とお話する機会があって、悠理ちゃんが栃木に引越したって聞いたから…。』
と、眞衣は言った。
「そ、そうだったんですか…。」
悠理は答えた。
『ごめんなさいね。』
と、眞衣が謝ってきた。
「え!?」
悠理は、意味が分からない様子。
『聖来のせいで…。』
眞衣は少し間を置いて、
『聖来のせいで、悠理ちゃんに辛い思いをさせちゃったわね…。』
と言った。
「い、いえ...そんな…。」
と、悠理は言った。
『悠理ちゃんが元気がなくなって、不登校になってしまったって、お母様から聞いたのよ。』
眞衣が言った。
「そ、それは…。」
悠理は、返す言葉に戸惑っていた。
『いいのよ。』
察したように、眞衣が言う。
「……。」
悠理は黙って聞いていた。
『本当にごめんなさい。』
眞衣は謝った。
「い、いえ...。」
悠理は申し訳なさそうに答えた。
『あの子が迷惑を掛けたのに、こんな事を言うのもなんだけど…。』
眞衣は少し間を置いて、
『悠理ちゃんは幸せになってね…。』
と言った。
「あ…は、はい…。」
悠理は、頷くように答えた。
『あの子は…悠理ちゃんの笑顔が…大好きだったから…。』
眞衣は、涙声になりながら、
『だから悠理ちゃんには、あの子の分も幸せになって欲しいの…。』
と、続けた。
「聖…来…。」
悠理は、聖来の笑顔を思い出しながら呟いた。
また、自然と涙が溢れてきた。
『悠理ちゃんに、それを伝えたくて電話したの。』
と、眞衣が言った。
「あ、ありがとうございます…。」
と、悠理は頭を下げた。
電話を切ったあと、涙が止まらなかった。
でも、眞衣からの電話のお陰で、また少しだけ、悠理は前向きになれた…。
━━悠理はプリクラの手帳をチェストではなく、部屋の右側の壁の端っこにある小さな台の上に置いた。
悲しくなった時に、ここに来れば聖来に会える気がしたからだ…。
━━2018年12月24日。
悠理と遥香は、お台場に来ていた。
場所はパレットタウンにした。
敷地内にあるヴィーナスフォートというショッピングモールで色々と買い物をしたりした。
夕方、辺りが暗くなってから、二人は大観覧車に乗った。
━━ゴンドラからは、東京タワーやスカイツリー、レインボーブリッジなどが見える。
「すごーい!」
遥香は嬉しそうな声を上げて、
「綺麗だね!」
と、悠理を見た。
「うん。」
悠理は頷いてから、
「遥香…。」
と言った。
「何?」
遥香は悠理を見た。
「来年の誕生日、またここに来ない?」
と、悠理が訊いた。
「う、うん…。」
遥香は悠理を見て、
「来ようね…。」
と微笑した。
「約束だよ。」
と言って、悠理は小指を出した。
「うん。」
と言って、遥香も小指を出す。
二人は指切りをして、来年の8月8日に、またここに来る約束をした…。
聖来との別れから1年半程経ったが、哀しみは消えなかった。
人と関わる事が怖くなった。
遥香と出会い、また人と関わる事に前向きになれた。
しかし、《大阪》や《たこ焼き》など、聖来に関係するような言葉は、悠理をまた哀しみの海に引きずり込む。
「私は…幸せになっちゃ…いけない…気がする…。」
悠理は呟くように言った…。
《そんな事あらへん…》
《ウチは大丈夫やから、悠理は幸せになってな…》
━━どこからか、聖来の声がした気がした。
「!?」
悠理は辺りをキョロキョロ見渡した。
━━当然、聖来はいない。
そして悠理は、何かを思い出したように、チェストから手帳を取り出した。
アルバイト代で買った、四段のチェストだ。
プリクラが沢山貼ってある手帳だ。
━━悠理は手帳を開いた。
聖来と二人で撮ったプリクラが沢山貼ってあった。
二人共、楽しそうに笑っている。
「聖…来…。」
悠理は呟くように言うと、手帳を抱き締めて泣いた。
《プルルルル》
悠理の携帯電話が鳴った。
名前ではなく番号が出ているので、登録のない番号のようだ。
悠理は涙を拭った。
「も…もしもし…。」
悠理は、恐る恐る電話に出た。
『鈴本悠理さんの…携帯で間違いないですか?』
と、受話器の向こうから女性の声がした。
━━相手の女性は悠理の事を知っているようなので、間違い電話ではなさそうだ。
「はい。」
悠理は不安そうに答えた。
『悠理ちゃん…。』
女性は少し間を置いて、
『聖来の…藤吉聖来の母です。』
と言った。
「!?」
悠理は驚きを隠せなかった。
電話の相手は、藤吉聖来の母の藤吉眞衣(ふじよし・まい)だった。
悠理は眞衣とは何度か会った事があった。
『突然、ごめんなさいね…。』
眞衣は謝ってきた。
「い、いえ…。」
悠理は答えた。
『実は、悠理ちゃんのお母様とお話する機会があって、悠理ちゃんが栃木に引越したって聞いたから…。』
と、眞衣は言った。
「そ、そうだったんですか…。」
悠理は答えた。
『ごめんなさいね。』
と、眞衣が謝ってきた。
「え!?」
悠理は、意味が分からない様子。
『聖来のせいで…。』
眞衣は少し間を置いて、
『聖来のせいで、悠理ちゃんに辛い思いをさせちゃったわね…。』
と言った。
「い、いえ...そんな…。」
と、悠理は言った。
『悠理ちゃんが元気がなくなって、不登校になってしまったって、お母様から聞いたのよ。』
眞衣が言った。
「そ、それは…。」
悠理は、返す言葉に戸惑っていた。
『いいのよ。』
察したように、眞衣が言う。
「……。」
悠理は黙って聞いていた。
『本当にごめんなさい。』
眞衣は謝った。
「い、いえ...。」
悠理は申し訳なさそうに答えた。
『あの子が迷惑を掛けたのに、こんな事を言うのもなんだけど…。』
眞衣は少し間を置いて、
『悠理ちゃんは幸せになってね…。』
と言った。
「あ…は、はい…。」
悠理は、頷くように答えた。
『あの子は…悠理ちゃんの笑顔が…大好きだったから…。』
眞衣は、涙声になりながら、
『だから悠理ちゃんには、あの子の分も幸せになって欲しいの…。』
と、続けた。
「聖…来…。」
悠理は、聖来の笑顔を思い出しながら呟いた。
また、自然と涙が溢れてきた。
『悠理ちゃんに、それを伝えたくて電話したの。』
と、眞衣が言った。
「あ、ありがとうございます…。」
と、悠理は頭を下げた。
電話を切ったあと、涙が止まらなかった。
でも、眞衣からの電話のお陰で、また少しだけ、悠理は前向きになれた…。
━━悠理はプリクラの手帳をチェストではなく、部屋の右側の壁の端っこにある小さな台の上に置いた。
悲しくなった時に、ここに来れば聖来に会える気がしたからだ…。
━━2018年12月24日。
悠理と遥香は、お台場に来ていた。
場所はパレットタウンにした。
敷地内にあるヴィーナスフォートというショッピングモールで色々と買い物をしたりした。
夕方、辺りが暗くなってから、二人は大観覧車に乗った。
━━ゴンドラからは、東京タワーやスカイツリー、レインボーブリッジなどが見える。
「すごーい!」
遥香は嬉しそうな声を上げて、
「綺麗だね!」
と、悠理を見た。
「うん。」
悠理は頷いてから、
「遥香…。」
と言った。
「何?」
遥香は悠理を見た。
「来年の誕生日、またここに来ない?」
と、悠理が訊いた。
「う、うん…。」
遥香は悠理を見て、
「来ようね…。」
と微笑した。
「約束だよ。」
と言って、悠理は小指を出した。
「うん。」
と言って、遥香も小指を出す。
二人は指切りをして、来年の8月8日に、またここに来る約束をした…。