8月8日の約束…
語られる真実…
「去年の誕生日…。」
未央奈は悠理を見て、
「遥香と約束したけど、会えなくなったでしょ?」
と訊いた。
「は、はい…。
未央奈さん達と旅行に行ったんですよね?」
悠理は、未央奈を見た。
「実は、あの日、遥香は手術をしたの…。
手術をすれば半年くらいは長生き出来るから…。」
と言った。
「えっ…でも、お土産…貰いました…。」
と、悠理は言った。
「岡山のトマトのゼリーの事?」
と、未央奈は訊いた。
「はい。」
悠理は頷いた。
「ごめんなさい…。」
未央奈は頭を下げて、
「あれ、私がネットで買ったの…。」
と言った。
「み、未央奈さんが?」
と、悠理は訊いた。
「ええ、遥香が咄嗟に《岡山に旅行する》って言ったから。」
と、未央奈は答えた。
━━2018年の7月のある日…。
「みなみさん…」
と、遥香はみなみに声を掛けた。
「どうしたの?」
みなみが遥香を見た。
━━ここは、みなみが勤務している宇都宮市内の総合病院の個室…。
遥香は、ベッドの上で身体を起こして座っていた。
部屋には、みなみと未央奈もいる。
「私…。」
遥香は二人を見て、
「手術…したい…。」
と言った。
「ほ、本当に…。」
未央奈は遥香を見た。
「うん…。」
遥香は頷いた。
「でも、どうして…?」
みなみは遥香を見て、
「あんなに手術を嫌がっていたのに…。」
と言った。
「うん…。」
遥香は頷くと、
「どうせ手術してもほんの数ヶ月長生き出来るだけだから…。
手術するだけ無駄だって思ってた…。」
と言った。
━━遥香は、自分が心臓病である事を知っていた。
手術しても治らない、悪性である事も知っていた。
ただ、手術をすれば、数ヶ月くらいは長生き出来るという、延命治療的な手術を勧められていた。
遥香は、
『どうせ助からないのなら、手術をするだけ時間と費用の無駄』
と、手術を拒んでいた。
━━それが急に『手術を受けたい』と言い出したから、二人は驚きを隠せなかった。
「もしかして…。」
未央奈は、
「この前会った、悠理ちゃんって子がきっかけ?」
と訊いた。
━━そう、悠理達と遥香達がオリオン商店街で会った数日後の事である。
「うん。」
遥香は頷いて、
「すっごく、可愛くていい子なんだ…。」
と言った。
「可愛い子だったね。」
未央奈が答えた。
「私…。」
遥香は少し間を置いて、
「悠理と…一秒でも多く…一緒にいたいって…思ったんだ…。」
と言った。
「遥香ちゃん…。」
みなみは、遥香を見つめた。
「だから…いいかな…?」
と言って、遥香は未央奈を見た。
「ん?」
未央奈も遥香を見た。
「お姉ちゃん…。」
遥香は薄ら涙を浮かべながら、
「私…もう少しだけ…長生き…しても…いいかな…?」
と未央奈を見つめた。
「あ、当たり前でしょ!」
と、未央奈は言った。
「手術の費用とか色々掛かって、迷惑掛けちゃうけど…。
それでも…いいの…?」
と、遥香は泣きながら言った。
「迷惑な訳ないでしょ!
そんな事言ってると本気で怒るよ…。」
と、未央奈は言った。
「ありがとう…お姉ちゃん…。」
遥香は、涙を拭って言った。
「わ、私…ちょっと、飲み物買って来るね…。」
未央奈はみなみを見て、
「みなみ、ちょっと、遥香の事を…お願いね…。」
と言った。
「うん、分かった。」
みなみが答えた。
━━病院内、自動販売機コーナーにあるソファー。
「ごめんね…遥香…。」
未央奈は泣いていた。
「私には…手術を受けさせてあげるくらいしか出来ない…。
それも…少し余命が延びるだけの…。
もっと…もっと…長生き…して欲しいのに…。」
未央奈は泣きながら言った。
まだ17歳の妹に、
『長生きしてもいいかな?』
と、申し訳なさそうに言わせてしまった自分が情けなかった。
不甲斐ないと思った。
自分が無力でちっぽけな人間に思えてきた。
泣いても泣いても、涙が止まらなかった。
━━そして、2018年8月8日。
遥香は手術を受けた。
延命治療的な手術は成功して、半年くらいだが、遥香の余命は伸びた。
━━悠理は未央奈から、遥香の手術の話を聴いた。
「遥香はね…。」
未央奈は悠理を見て、
「手術をしなかったら、去年のクリスマスまで、生きられるか…分からなかったの…。」
と言った。
「え?」
悠理は驚きを隠せなかった。
「でも、悠理ちゃんと一秒でも多く一緒にいたいっていう想いが…。」
未央奈は再び涙目になりながら、
「遥香を…今日まで生かしてくれたの…。」
「は、遥香…。」
悠理は、未央奈から話を聴いて、涙が止まらなかった。
未央奈は悠理を見て、
「遥香と約束したけど、会えなくなったでしょ?」
と訊いた。
「は、はい…。
未央奈さん達と旅行に行ったんですよね?」
悠理は、未央奈を見た。
「実は、あの日、遥香は手術をしたの…。
手術をすれば半年くらいは長生き出来るから…。」
と言った。
「えっ…でも、お土産…貰いました…。」
と、悠理は言った。
「岡山のトマトのゼリーの事?」
と、未央奈は訊いた。
「はい。」
悠理は頷いた。
「ごめんなさい…。」
未央奈は頭を下げて、
「あれ、私がネットで買ったの…。」
と言った。
「み、未央奈さんが?」
と、悠理は訊いた。
「ええ、遥香が咄嗟に《岡山に旅行する》って言ったから。」
と、未央奈は答えた。
━━2018年の7月のある日…。
「みなみさん…」
と、遥香はみなみに声を掛けた。
「どうしたの?」
みなみが遥香を見た。
━━ここは、みなみが勤務している宇都宮市内の総合病院の個室…。
遥香は、ベッドの上で身体を起こして座っていた。
部屋には、みなみと未央奈もいる。
「私…。」
遥香は二人を見て、
「手術…したい…。」
と言った。
「ほ、本当に…。」
未央奈は遥香を見た。
「うん…。」
遥香は頷いた。
「でも、どうして…?」
みなみは遥香を見て、
「あんなに手術を嫌がっていたのに…。」
と言った。
「うん…。」
遥香は頷くと、
「どうせ手術してもほんの数ヶ月長生き出来るだけだから…。
手術するだけ無駄だって思ってた…。」
と言った。
━━遥香は、自分が心臓病である事を知っていた。
手術しても治らない、悪性である事も知っていた。
ただ、手術をすれば、数ヶ月くらいは長生き出来るという、延命治療的な手術を勧められていた。
遥香は、
『どうせ助からないのなら、手術をするだけ時間と費用の無駄』
と、手術を拒んでいた。
━━それが急に『手術を受けたい』と言い出したから、二人は驚きを隠せなかった。
「もしかして…。」
未央奈は、
「この前会った、悠理ちゃんって子がきっかけ?」
と訊いた。
━━そう、悠理達と遥香達がオリオン商店街で会った数日後の事である。
「うん。」
遥香は頷いて、
「すっごく、可愛くていい子なんだ…。」
と言った。
「可愛い子だったね。」
未央奈が答えた。
「私…。」
遥香は少し間を置いて、
「悠理と…一秒でも多く…一緒にいたいって…思ったんだ…。」
と言った。
「遥香ちゃん…。」
みなみは、遥香を見つめた。
「だから…いいかな…?」
と言って、遥香は未央奈を見た。
「ん?」
未央奈も遥香を見た。
「お姉ちゃん…。」
遥香は薄ら涙を浮かべながら、
「私…もう少しだけ…長生き…しても…いいかな…?」
と未央奈を見つめた。
「あ、当たり前でしょ!」
と、未央奈は言った。
「手術の費用とか色々掛かって、迷惑掛けちゃうけど…。
それでも…いいの…?」
と、遥香は泣きながら言った。
「迷惑な訳ないでしょ!
そんな事言ってると本気で怒るよ…。」
と、未央奈は言った。
「ありがとう…お姉ちゃん…。」
遥香は、涙を拭って言った。
「わ、私…ちょっと、飲み物買って来るね…。」
未央奈はみなみを見て、
「みなみ、ちょっと、遥香の事を…お願いね…。」
と言った。
「うん、分かった。」
みなみが答えた。
━━病院内、自動販売機コーナーにあるソファー。
「ごめんね…遥香…。」
未央奈は泣いていた。
「私には…手術を受けさせてあげるくらいしか出来ない…。
それも…少し余命が延びるだけの…。
もっと…もっと…長生き…して欲しいのに…。」
未央奈は泣きながら言った。
まだ17歳の妹に、
『長生きしてもいいかな?』
と、申し訳なさそうに言わせてしまった自分が情けなかった。
不甲斐ないと思った。
自分が無力でちっぽけな人間に思えてきた。
泣いても泣いても、涙が止まらなかった。
━━そして、2018年8月8日。
遥香は手術を受けた。
延命治療的な手術は成功して、半年くらいだが、遥香の余命は伸びた。
━━悠理は未央奈から、遥香の手術の話を聴いた。
「遥香はね…。」
未央奈は悠理を見て、
「手術をしなかったら、去年のクリスマスまで、生きられるか…分からなかったの…。」
と言った。
「え?」
悠理は驚きを隠せなかった。
「でも、悠理ちゃんと一秒でも多く一緒にいたいっていう想いが…。」
未央奈は再び涙目になりながら、
「遥香を…今日まで生かしてくれたの…。」
「は、遥香…。」
悠理は、未央奈から話を聴いて、涙が止まらなかった。