8月8日の約束…
エピローグ
━━2020年3月。
悠理が栃木から大阪に向かう日。
宇都宮の駅に、綾乃、未央奈、みなみ達の三人の他に、紗耶とさくらも来ていた。
「これを…悠理ちゃんに貰って欲しくて…。」
と未央奈は言って、一枚の絵を差出した。
「これは…。」
受け取った悠理は、
「もしかして…遥香が…?」
と訊いた。
「うん、悠理ちゃんに貰って欲しくて。」
と、未央奈は言った。
━━公園のベンチで、悠理と遥香が楽しそうに話している絵だった。
「すごーい!」
絵を見た紗耶が言った。
「遥香さんて子、絵が上手だね!」
さくらも驚きを隠せなかった。
二人共、遥香とは面識がないが、悠理の親友という事は知っていた。
遥香の描いた絵は、とても上手くプロ級の出来だった。
「こんな大事な物、受け取れません。」
と、悠理は絵を返そうとした。
「悠理ちゃんに持ってて欲しいの…。
元々、悠理ちゃんにあげようとして描いてた絵だから…。
遥香、イラストレーターになりたかったみたい…。」
と、未央奈は言った。
流石、イラストレーターを目指していただけの事はあると、その場の誰もが納得した。
ベンチの傍にある柱も描かれていて、
《2001.8.8》と《YS & HI》という、
遥香の落書きも、しっかりと描かれていた。
「あれ?」
と、さくらは絵を後ろから見て、
「裏に何か書いてあるよ。」
と言った。
「あ、ほんとだ。」
紗耶も覗き込んで言った。
「ん?」
悠理は、絵の裏を見た。
そこには
※
サヨナラに強くなれ
この出会いに意味がある
悲しみの先に続く
僕たちの未来
始まりはいつだって
そう何かが終わること
もう一度君を抱きしめて
守りたかった
愛に代わるもの
※
と書かれていた。
━━これは遥香が好きだった曲の、歌詞の一部を抜粋したものだった。
何気ない言葉であるが、病気と闘っていた遥香の言葉となると、重みが違う…。
「遥香…。」
悠理の頬を涙が伝った。
「ありがとうございます。」
悠理は絵を受け取って、
「遥香…ありがとう…。
この絵…大切にするね…。」
と言った。
「遥香さんのお姉さん…。」
紗耶が声を掛けた。
「どうしたの?」
未央奈は、紗耶とさくらを見た。
「私達、遥香さんのお墓参り行ってもいいですか?」
と、さくらが訊いた。
「ええ、勿論。」
未央奈は少し間を置いて、
「でも、どうして?」
と訊いた。
「遥香さんは…。」
紗耶は悠理を見てから、
「私達の親友の心を救ってくれた、大切な人だから…。」
と言った。
「紗耶…さくら…。」
悠理の頬を再び涙が伝った。
紗耶とさくらの目にも涙が浮かぶ。
「遥香…。
果たせなくてごめんね…。」
悠理は少し間を置いて、
「8月8日の約束…。」
と言った。
遥香は短い人生の中で、多くの人を幸せにした…。
━━悠理は、その絵に向かって声を掛けたのだ。
その絵は、部屋の右側の壁の端っこに飾られていた。
その絵の近くの台には、聖来と撮ったプリクラの手帳が置いてある。
悲しくなった時に、ここに来れば遥香や聖来に会える気がしたからだ…。
鈴本悠理、新たな門出の日である…。
【終】
※~※
サヨナラの意味/乃木坂46様
作詞:秋元康様
悠理が栃木から大阪に向かう日。
宇都宮の駅に、綾乃、未央奈、みなみ達の三人の他に、紗耶とさくらも来ていた。
「これを…悠理ちゃんに貰って欲しくて…。」
と未央奈は言って、一枚の絵を差出した。
「これは…。」
受け取った悠理は、
「もしかして…遥香が…?」
と訊いた。
「うん、悠理ちゃんに貰って欲しくて。」
と、未央奈は言った。
━━公園のベンチで、悠理と遥香が楽しそうに話している絵だった。
「すごーい!」
絵を見た紗耶が言った。
「遥香さんて子、絵が上手だね!」
さくらも驚きを隠せなかった。
二人共、遥香とは面識がないが、悠理の親友という事は知っていた。
遥香の描いた絵は、とても上手くプロ級の出来だった。
「こんな大事な物、受け取れません。」
と、悠理は絵を返そうとした。
「悠理ちゃんに持ってて欲しいの…。
元々、悠理ちゃんにあげようとして描いてた絵だから…。
遥香、イラストレーターになりたかったみたい…。」
と、未央奈は言った。
流石、イラストレーターを目指していただけの事はあると、その場の誰もが納得した。
ベンチの傍にある柱も描かれていて、
《2001.8.8》と《YS & HI》という、
遥香の落書きも、しっかりと描かれていた。
「あれ?」
と、さくらは絵を後ろから見て、
「裏に何か書いてあるよ。」
と言った。
「あ、ほんとだ。」
紗耶も覗き込んで言った。
「ん?」
悠理は、絵の裏を見た。
そこには
※
サヨナラに強くなれ
この出会いに意味がある
悲しみの先に続く
僕たちの未来
始まりはいつだって
そう何かが終わること
もう一度君を抱きしめて
守りたかった
愛に代わるもの
※
と書かれていた。
━━これは遥香が好きだった曲の、歌詞の一部を抜粋したものだった。
何気ない言葉であるが、病気と闘っていた遥香の言葉となると、重みが違う…。
「遥香…。」
悠理の頬を涙が伝った。
「ありがとうございます。」
悠理は絵を受け取って、
「遥香…ありがとう…。
この絵…大切にするね…。」
と言った。
「遥香さんのお姉さん…。」
紗耶が声を掛けた。
「どうしたの?」
未央奈は、紗耶とさくらを見た。
「私達、遥香さんのお墓参り行ってもいいですか?」
と、さくらが訊いた。
「ええ、勿論。」
未央奈は少し間を置いて、
「でも、どうして?」
と訊いた。
「遥香さんは…。」
紗耶は悠理を見てから、
「私達の親友の心を救ってくれた、大切な人だから…。」
と言った。
「紗耶…さくら…。」
悠理の頬を再び涙が伝った。
紗耶とさくらの目にも涙が浮かぶ。
「遥香…。
果たせなくてごめんね…。」
悠理は少し間を置いて、
「8月8日の約束…。」
と言った。
遥香は短い人生の中で、多くの人を幸せにした…。
━━悠理は、その絵に向かって声を掛けたのだ。
その絵は、部屋の右側の壁の端っこに飾られていた。
その絵の近くの台には、聖来と撮ったプリクラの手帳が置いてある。
悲しくなった時に、ここに来れば遥香や聖来に会える気がしたからだ…。
鈴本悠理、新たな門出の日である…。
【終】
※~※
サヨナラの意味/乃木坂46様
作詞:秋元康様