自分より大切なもの



佐古
「………悪い、手、痛かったか?」



椿
「いや、大丈夫。」



佐古
「………おい」



椿
「何?」



佐古
「俺……心配なんだよ、お前のことが。」



椿
「……………?」



佐古
「出席取る時にお前が学校来てないと心配になって、仕事中もずっと頭から離れなくて、ちっとも集中できねぇよ。……だからちゃんと来いよ、朝からちゃんと来い。」




 佐古は顔を椿の肩に埋め、そのまま彼女をギュッと抱きしめた。




・・・反省しました。




椿
「うん……分かった。」




 佐古の大きな背中に手をまわし、椿も同じように彼を抱きしめた。




・・・そう、この人こそが……私の好きな人。こんな面倒事ばっかり背負い込んだ私を優しく抱きしめてくれた。見捨てないでいてくれた。そして “ 素直になる勇気 ” を教えてくれた。簡単に触れられないから、尚いとおしい。私たちの関係は、簡単ではないから………




・・・だからこそ、きっと離れられない。


   


   
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