自分より大切なもの
・・・そろそろ三時間目かな。授業中に通る廊下は静まり返っている。パタンパタンと自分が歩く足音だけが響く……。各クラスの前を通り過ぎる度に教師達の声が何となく耳に入る。だけど、この人たちの声は……私の心には響かない。
- 二年四組 -
椿
「すぅ……はー……。」
椿は自分のクラスの前まで来ると、一度立ち止まって小さく深呼吸をした。このまま引き返して帰ってしまおうか……。扉の取っ手に置いた手を一度引っ込めた。
・・・今日もがんばろ。
そしてもう一度手を置き、教室の扉を開けた。