自分より大切なもの



 診察が終わり、佐古から先に車に戻っているようにと言われた椿は後部座席に座り外を眺めていた。
すでに日が沈み、辺りは暗くなり始めていた。

   



   コツコツ……。






椿 
「……っ!?」




 暗がりの中から出てきた人影は、椿の座る後部座席の窓ガラスをノックした。

   



 ・・・だ……誰………?






 よく見ると、それは白衣を着たままの寺内だった。椿は急いでドアを開ける。




椿 
「……なんだ、寺内先生か……。」



寺内
「なんだって、ひどいなぁ~椿ちゃん。」



椿 
「あ、いや……。不審者かと思ってビックリしたから…。」



寺内
「ごめんね、驚かせちゃって。椿ちゃん今日は家に帰るの?」



椿 
「うん、何も予定ないし。」



寺内
「じゃあウチに来なよ、夜ご飯一緒に食べよう。」



椿 
「あ~……。」



寺内
「都合悪いかい?……それとも、彼氏に悪いかな。」



椿
「いやいやいや、そんな洒落たもんは持ってないけど…」



寺内
「はは、椿ちゃんはホントに相変わらず面白いね。」



椿 
「あはっ(笑)」






・・・あぁ……やっぱり好きだなぁ……この人は、私が弱っている時、いつもそばに居てくれる。昔から、いつもそうだったよね……。







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