自分より大切なもの
佐古
「……飲み物買うけど、お前も何か欲しい物とか食いたい物あったら何でも買ってやるから好きに選びな。」
椿
「コンビニで何でもって言われてもねー……。」
佐古
「あのな、彼女でもねぇ奴に何で俺が貢がなきゃなんねーんだよ、アホか。」
佐古がドアを開け、車の外に出ようとした時……、椿がハッとしたように言った。
椿
「あ、やめた方がいい……。」
佐古
「……は?」
椿
「ここのコンビニ、よくウチの生徒居るから。」
佐古
「だから何?」
椿
「ヤバくないの?」
佐古
「別にやましい事してる訳じゃねぇんだから関係ねぇだろ。」
佐古はぶっきらぼうにそう言うと、先にコンビニの中へ入って行った。
椿は小走りで彼を追いかけ、飲み物を選ぶ佐古の背中から、また質問をした。
椿
「……じゃあもし私が……彼女、だったら?」
一瞬、二人の間に沈黙の時が流れる。
佐古
「そうだな、喧嘩ばっかりしてんだろうな。」
佐古は椿の方を見ずに返答すると、飲料水のドアを開けた。
椿
「意外と気……合うかもよ。」
椿がそう言い返すと、佐古は即答した。
佐古
「はは、無い、無い。」
・・・何で少しショックなんだろ。
椿
「じゃあどんなタイプが好きなの?」
佐古はそんな簡単な椿からの質問に、すぐに答えることができなかった。
まるで何か昔の記憶を思い出しているかの様なその横顔は、椿からはとても悲しそうに見えた。
佐古
「……ボンっ、キュっ、ボンな女。」
椿
「……しょーーもな。」
佐古
「じゃあお前は?」
佐古は緑茶とブラックコーヒーを自分が持つカゴに入れ、椿に聞き返した。
椿
「え……健康的な人……かな?」
佐古
「ぷっ、お婆ちゃんかお前は。」
椿
「なっ………(怒)」
ミルクティーを掴んだ椿の手から佐古がそれを取り上げ、カゴに入れた。
椿
「いいよ、婆さんは自分で払います。」
佐古
「……気にしてたんかい(笑)いいからほら、他にも欲しい物カゴに入れろ。」
椿
「ない。」
佐古
「じゃあ先に車戻ってろ。」
椿
「うん。」