自分より大切なもの
夏樹
「え、ってか何でこんな時間にさこりんと椿は一緒にいるの?」
佐古
「病院に連れて行ってたんだよ、及川を。」
自分の名前を呼ばれて、椿は少し反応した。
ドキ………………。
・・・なに動揺してんの……ただ苗字呼ばれただけじゃん……。
佐古は病院での事を大まかに夏樹に説明し、夏樹はメグミと連絡が取れていない事を佐古に伝えた。椿は笑いながら夏樹と話す佐古を後ろの席から眺めながらミルクティーを飲んだ。
・・・楽しそうだな……。私もあんな風に、笑わせてあげられたらいいのにな。夏樹は、私が持っていないものを持ってる。私が必死で手に入れようとしていものを……この子は生まれつき、持ってるんだ。あの明るい性格、本当に羨ましいなぁ……。
佐古
「あぁ、わかった。じゃあな、はい、また来週な、はい、おやすみ。」
ピっ。
椿
「…………。」
佐古
「あ、やべ……切っちゃった!」
椿
「………みたいだね。」
佐古
「悪ぃ、もっかいかけ直して。」
椿
「いいよ、べつに他に要件ないし。」
佐古
「いやー、あいつはやっぱり面白い奴だな。」
椿
「うん。」
佐古
「んじゃ、そろそろ帰りますか……あ、てかお前、親御さんに連絡つくか?」
椿
「お母さん?…………無理。」
佐古
「いや……。無理とか嫌とかの問題じゃねぇんだわ、義務だから。」
椿
「反抗期で無理だって言ってんじゃないよ、本当にダメなんだってば。」
佐古
「じゃあ俺もお前ん家にお邪魔するしかねぇな。」
椿
「……結構です。」
佐古
「あのな、自分の生徒に怪我させといて一言も無しって訳にいかねぇだろ。しかも校舎内で……。会ってちゃんと頭下げねぇと。」
椿
「……別にあんたのせいじゃないし。」
佐古
「そう言う問題じゃねえだろ。」
椿
「………てかこんな傷、気付かないだろうしね。」
佐古
「…………。」