自分より大切なもの
今日は化粧を薄めにした。髪をゆるく巻き、服は膝丈のカーキ色のワンピース、母から貸してもらったカシミアのコート。19才の差を、出来るだけ目立たせない様にしたかった。「少しでも…大好きな人に、近付きたい。」
彼女は亮介を、一途に純粋に……そして心から愛していた。
愛
「今日は、ずっと……一緒に居られる。時間を気にせず、周りを気にせず、ずっと、ずっと……。」
[ 着信音 ]
愛
「よし、メイクOK……髪の毛OK……服も大丈夫!ちょっと今日のアタシ……キレイかも。さてと、大好きなあの人から電話が来た。」
アパートのカギを持ち、鼻歌を歌い玄関に向かいながら亮介からの電話に出る彼女には、笑顔が溢れていた。