COLOR～番外編集～
俺は、呆れてため息をついた。

あのねぇ、と呟く。


「咲がそれで後悔するのは間違ってる。」

でしょ？とまっすぐ目を見つめて尋ねた。


「真面目な咲が、本来の決まりを破ってまで戻ってきたのは秀ちゃんのためでしょ？」

それだけ彼女のことが好きなんだろ？


「秀ちゃんが目を覚ますのを待つんでしょ？俺は、咲の選択は正しかったと思う。」


「……俺は、戻ってきたことに後悔はしてない、けど。」

要が、と声にならない声を呟いた。



「俺は、咲と秀ちゃんに幸せになって欲しいと思ってる。だからこれでいい。」


俺が向こうの世界に行くから。とそこまで言うと、やっと咲の表情は軽くなった。



「……ありがとう。」
「どういたしまして。ハーゲンダッツ一個奢りね。」

「はいはい。」


俺が冗談めかしてそう言うと、咲は笑った。
これでいつも通り。


これでいい。


これでいいんだ。



「……やっぱり要には敵わない。」
「何か言った？」

「いや何にもない。」

咲はふいと顔を背ける。



嘘をついた。本当は聞こえていた。

「……敵わないのは俺の方だよ。」


そっと、聞こえないくらいの声で呟いた。
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