COLOR~番外編集~
「要くんは───」
そこまで思い返した所で、ドアがノックされた。
はっと我に返ると無意識に握りしめていた拳をゆっくり開いた。
いつの間にか、強く握っていたようで爪のあとが手のひらに残っていた。
それから、ドアを開けると優しげな女性が立っていた。
「斎藤くん、起きてる?そろそろ朝ごはんの時間ですよ。」
「わかりました。」
そっと礼をしてドアを閉めた。
おそらく、彼女はこのセレーノ学園の寮母だろう。
確か、前作の攻略キャラの義母だったっけ。
「まぁ、俺には関係ないんだけどね。」
──本当は、ゲームの世界になんて来たくなかった。
それが本音。
もとの世界には、家族もいるし友人だっている。
それを捨てて、こっちへ行かせるのはあまりにも残酷だ。
「咲が帰らなかったら、俺が来ることはなかったのに。」
申し訳なさそうな、咲の顔が浮かんだ。