COLOR~番外編集~


「要くんは───」




そこまで思い返した所で、ドアがノックされた。


はっと我に返ると無意識に握りしめていた拳をゆっくり開いた。


いつの間にか、強く握っていたようで爪のあとが手のひらに残っていた。


それから、ドアを開けると優しげな女性が立っていた。



「斎藤くん、起きてる?そろそろ朝ごはんの時間ですよ。」

「わかりました。」


そっと礼をしてドアを閉めた。


おそらく、彼女はこのセレーノ学園の寮母だろう。
確か、前作の攻略キャラの義母だったっけ。


「まぁ、俺には関係ないんだけどね。」





──本当は、ゲームの世界になんて来たくなかった。



それが本音。


もとの世界には、家族もいるし友人だっている。

それを捨てて、こっちへ行かせるのはあまりにも残酷だ。


「咲が帰らなかったら、俺が来ることはなかったのに。」

申し訳なさそうな、咲の顔が浮かんだ。



< 32 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop