COLOR~番外編集~

別に他意なんかない。なかった。






***

その神社へと続く階段をのぼると、目の前には大きな桜の樹とその奥の境内へと道が続いている。


きっと春に来たら桜がすごい綺麗なんだろうなぁ、すごく大きい木だ、と心の中で思わずこぼした。


残念ながら、今は秋の終わり。


春には桜が満開なはずの樹はすでに葉も落ちてしまっていて、ただ味気なかった。



「しかし、疲れたな‥」



この時期は毎年仕事が忙しい。この辺りは店が多くて商人やら町人やらがたくさんいるが、どの人も忙しなく働いている。


自分も例に漏れず。

仕事を終えて、帰路へついたときにはすでに空は真っ赤に染まりきっていた。



長い時間の仕事で、腰も足もぼろぼろだった。



あまりにも疲れすぎて、どこかでひと休みしたいと思った結果、自分はこの神社へと足を向けたのだった。





「境内で座ってひと休みでもするか。」



そう呟いて境内へと目を向けた‥が。




「誰かいる‥のか?」

どうやらそこには既に先客がいるようで、楽しそうな話し声が聞こえてきた。

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