COLOR~番外編集~
「‥‥もう」

さっきから自覚しろと言っているのに、全く気づいていない。


青年はまた大きなダメージを負ったようで、へなへなとその場にしゃがみ込んだ。


ちらりと髪の間から覗く耳が朱くなっている。


少女はまたもやその状況に慌てている。


「あれ?大和さん?」


どうしましたか、と自分もしゃがんで呼びかける少女と何かを堪えるような青年の二人。


とても幸せそうな「先客」たちだった。


「へぇ」


ものすごく絵になる二人だと思った。

どういうわけかまだ恋仲ではなさそうだが、見ていてとても微笑ましい。



「休憩しに神社へ来たんだが」

本当はここで休憩しようと思っていた。

まあ、でも。



神社の境内は二人がいるし、こちらとしてもあんなに睦まじい二人の邪魔はしたくない。

だから、とりあえず今日のところは帰ろうかとそんな結論に至った。



‥それにしても



青年は言わずもがな、少女もまだ幼さはあるが、随分と顔が整っている。



コロコロ表情は変わるが、さっきの無邪気な笑顔も可愛らしさがあった。


名前も何も知らない自分でさえも少し見惚れてしまうほどの美しさだ。




少女をそう思ってじっと見つめていたからだろうか。



不意に青年が顔を上げてこちらを向いた。
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