耐雪梅花麗〜愛〜
〜沖田〜

ザシュッ!

また一人人を斬る。

そしてふぅ、息をつき、皆の無事を確認する。

いつも後ろから確認する主義。振り向くとうつ伏せに血まみれで倒れている凜華ちゃん。

「え?…凜華ちゃん?!」

確か後ろから殺気がして、誰かが斬って死んだものだと思っていた。まさか、凜華ちゃんが守ってくれていたなんて…。

「沖田さん…凜華さんが…。凜華さんを切った輩は斬りました。しかし…。」

息は…ある!

「応急処置をしなさい。まだ息はあるようです。運びますよ。利根さんはこっちを手伝って、他の人は死人と捕虜の処置をしてください。」


乙女島田を結っている為か、寝かせにくい。どうにか板に寝かせ、服を脱がす…けれどこの子は女子。服を脱がせば見てしまうことになる。多少の罪悪感はあるが、

「助けるためです!御免!」

できるだけ人通りの少ない所へ移動する。ほぼ人の通らないような場所へ。

凜華ちゃんの着物と襦袢を一気に開き、上半身を脱がせる。血まみれのサラシを外し、うつ伏せに寝かせる。あちゃー、だいぶ斬られてる。背中をバッサリと。そしてもしものために持っているサラシを簡易的に巻いてとりあえず止血。

バサッと自分の羽織を凜華ちゃんに被せて、よし!

「利根さん!急いで屯所まで運びますよ。できるだけ人通りの少ない道を通ろうと思います。さぁ、急ぎますよ!」

持ち上げてみるとすごく軽い、という訳でもないが、軽かった。こんなに強いのにどこからそんな力が出ていたのだろうか。

ここから屯所までは遠い訳では無いけれど、近くはない。急がなくては!息が小さくなっているのを感じる。

「凜華ちゃん!あなたはまだ死んではいけません!」

いつもならそんなに長くない道のり。いつもより長く感じた。



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