来世はセロリになりたい、
「疲れた」
「お疲れ様」
「そっちもお疲れ様」

コンクールまでの道のりはあと3日。
早いなあと思っている暇もなかった。
練習が長いせいもあり、部員のほぼ全員は疲れ込んでいる。
ペットボトルはもう殻になっていて、それがいくつも椅子の周りに散らばっている、
替えようのリードやタオルはもうそろそろ休みたいとこちらを見ている。

「15分休憩」

そう言われると、一斉に生徒が動き始める。
長い長い練習時間に15分の休憩は少ない。
きっとほとんどの部員が彼女に怒りを覚えた。

「いや、みんな凄いね、こんなこと3年間も本気でやってきたなんて」

未経験者だが実力に問題がないとされた同級生が隣から声をかけてきた。
きっと初めてのコンクールに心を弾ませている。

「こんな時に話すのはあれだけど、結構みんな飽きるよ」

「そうなの?」

「私が中学の時は、みんな2年の終わり頃にはやる気無くしてたなあ、私も含め」

「えええ!」

すると同級生は不思議そうに首を傾げた。

「じゃあなんで凛子は吹部、入ったの?」


なんで、なぜ、なんで、



『大人っぽいね、新入生? 』



「なんでかあ、吹部、なんでだろう」



『綺麗な子だね、 』

『私は小西っていいます。
あ、朝会始まっちゃうね!行こう。 』



「ええ、理由ないの?」



『 今年度も引き続き、吹奏楽部の顧問は小西桜空先生です。』



「友達に誘われたからかな、」

「そっかあ」


桜よりも空よりも美しいなあ、そう思ってしまったのを
この美しさを間近で見たいと思ってしまったのを

思い出してしまった。


「はい、休憩終わりだよ」

夏もやっぱり彼女は相変わらず綺麗で

「じゃあ1から通します、」


きっと勝てるんじゃないかって

「1.2.3.4」



もっともっと聞きたい音楽が
話したい
吹きたい
触れたい
何にだろう、何に向けてだろうか、

ほしい。何かわからないけど、ほしい。



「良かったと思います。
じゃあ片付けに入って、」

ああ、


なんだろう、これは、大っ嫌いってこんな感情なのか、

今まであまり人を嫌いになっていないから

きっと知らないだけ、

大変だ、嫌いという感情は、目元だけでなく、心臓も熱い。



目で追うくせに合ったら逃げてしまう。

これは何。


私はどうかしてしまったのかもしれない。
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