わたしの願い

＊

「龍希、いつまで寝てるのよ、愛ちゃんが心配するでしょう？」

「わたしは、大丈夫です。信じてますから」

「愛ちゃんは強いのね。龍希を変えてくれて、ありがとう」

「それは、こっちのセリフです。わたしは龍希くんに出会って人生が180度かわりました」

「そう・・龍希の過去のことも、知ってるのよね？」

「はい、聞きました」

「わたしのお姉ちゃんのこと、なにかいってた？」

「・・」


一瞬ためらった。

だって、龍希くんはお母さんのことよく思っていないから。


「いいのよ、教えてちょうだい」

「龍希くんは・・お母さんのこと嫌いだっていってました。一番愛されたかった人に、愛してもらえなかったって」

「そう・・やっぱりそう、思うわよね」

「え？」

「龍希はあの頃まだ小さくて、そのとき両親が離婚して、大変な思いたくさんしてきたと思う。きっとまだ打ち明けてない、自分の中での闇があるんだろうって。でもね、わたしのお姉ちゃんも必死だったのよ。言い訳に聞こえるかもしれないけれど」

「いえ、そんなこと・・」

「お姉ちゃんね、働いたことなかったのよ。旦那さん、まあ最低な人だったんだけど、その人とは学生のころに知り合ってね。それでお姉ちゃんが社会人になるまえに結婚したの。そのあと龍希を授かって幸せな毎日だったのに、ある日突然旦那さんの浮気が発覚した。

お姉ちゃんはね、龍希を守るために働いた。龍希を大学までいかせるために、お金はどうしても欲しくて、それで必死で。でもだんだんそのやり方が、おかしなほうにいっちゃってね」

「・・じゃあ龍希くんのお母さんはどうして冷たくあたるようになってしまったんですか・・？」

こんなこと聞くのは失礼だけど、でもそこまでして龍希くんのために働いていたのにそれを龍希くんは知らなかったなんて。