わたしの願い

「お姉ちゃん、いってたわ。あの子には幸せになってほしいからって。こんな最低な自分が母親だと思われたらまわりからどう思われるかわからない、いつか龍希が大人になって家をでていったら二度と関わらないようにって」

「そんな・・」

「おかしいって思うでしょ？不器用だなって。でもね、それがお姉ちゃんなりにだした決断だったの。自分が冷たくすれば龍希はきっと自分をいつか見放して、自由な世界で生きていくだろうって。お姉ちゃんはそれをずっとのぞんでた」

すれ違い。

龍希くんも龍希くんのお母さんもお互い好きだったのに。


「でもね、これはわたしの勝手な想像なんだけど、龍希は本当はお母さんのこと今でも好きなんじゃないかしら？」

「え？」

「龍希も同じくらい不器用だから。お姉ちゃんは龍希のこと嫌いなわけじゃなかったってこと何度も言おうとした。ただ龍希は余計傷つくんじゃないかって思った。自分を責めるんじゃないかって。こっちに転校してきて、やっと変わってきてくれた龍希に、そんなことわたしはいえなかった」

「おばさん・・」

「こんな話、しちゃってごめんね」

「全然、むしろ大事なお話なのに聞いちゃってなんだか申し訳ないです・・」

龍希くんも知らない、龍希くんの過去。

お母さんの想い。

人生ってやっぱり不思議だ。

自分の知らないことってたくさんある。

優しくしてくれてたのが嘘だったり、逆に冷たくされたけれどそれはその人のためだったり。