わたしの願い

「龍希に、愛ちゃんから話してみてくれないかな?」

「え?」

「こんなこと頼むべきじゃないってわかってる。でも、愛ちゃんからなら、龍希はきっと受け止められるんじゃないかって思うの」

「でも・・」

「わたしは今は龍希の母親。でも、お姉ちゃんの妹でもある。龍希のこと大切だけど、お姉ちゃんのことも同じくらい、大好きだったから」

おばさんは静かに涙を流した。


おばさんの気持ち、痛いくらいにわかる。

もう死んでしまった人には一生会えない。

わたしも本当の両親には一生会えない。

でも、心の中にずっといる。

記憶はなくても、愛されていたって知れた。

それだけでわたしは胸に手をあてると幸せな気持ちになれる。


龍希くんも、もう2度とお母さんには会えない。

このまま、お母さんのことを憎んだまま、愛されたことを知らないまま、前のわたしみたいになってほしくない。

きっとお母さんの想いを知れば、心の中にある闇、がなくなってくれる。

だから・・

「わかりました」

わたしはそう答えていた。
< 242 / 309 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop