わたしの願い
龍希side
◇
ずっと暗闇の中をさまよっていた。
そんな中でかすかに聞こえる機械音。
そして手に感じるぬくもり。
誰かが、俺の手を握ってくれてる。そんな安心感があった。
どれくらい、寝ていたんだろう。
話し声が聞こえて目をうっすらあけると、そこにはおばさんと愛がいた。
「わたしは龍希くんに出会って人生が180度かわりました」
その言葉をきいて、俺はあけかけた目を閉じた。
おばさんが愛に話している内容は、俺が知らなかった母さんのことだった。
「お姉ちゃん、いってたわ。あの子には幸せになってほしいからって。こんな最低な自分が母親だと思われたらまわりからどう思われるかわからない、いつか龍希が大人になって家をでていったら二度と関わらないようにって」
なあ、母さん。違うんだよ。
俺は母さんといれればそれだけで幸せだったんだよ。
それに母さんと2人でいられるなら不幸になったってよかった。
まわりからどう思われようと、母さんは母さんなんだから。
そんなことを今さら思ったって遅い。
どうして、そんな簡単なことを俺はいえなかったんだろう。
どうして俺は母さんを突き放してしまったんだろう。