わたしの願い
「龍希も同じくらい不器用だから。お姉ちゃんは龍希のこと嫌いなわけじゃなかったってこと何度も言おうとした。ただ龍希は余計傷つくんじゃないかって思った。自分を責めるんじゃないかって。こっちに転校してきて、やっと変わってきてくれた龍希に、そんなことわたしはいえなかった」
「わたしは今は龍希の母親。でも、お姉ちゃんの妹でもある。龍希のこと大切だけど、お姉ちゃんのことも同じくらい、大好きだったから」
おばさんのすすり泣きが聞こえて俺は胸がしめつけられた。
俺はおばさんの想いにも気づけなかった。
あの日、母さんが死んでしまった日、
――「あんなやつ、母さんでもなんでもなかった。死んでくれてよかった」
俺はなんてひどいことをいってしまったんだろう。
あのときはぶたれたことの意味もわかんなくて、おばさんにもむかついてた。
でもいまはわかる。
母さんは俺にとっての母さんであり、おばさんにとってはたった1人のお姉ちゃんだったんだ。
死んでいい人なんてこの世の中にいない。
そんな当たり前のことがどうしてあのときの俺にはわからなかったんだろう。
愛の「わかりました」という声が聞こえて俺は閉じていた口をあけた。