わたしの願い



「ただいま」

「おかえり。寒くなかった?体冷やさないようにね」

もう季節は11月。

ずいぶん肌寒くなり、すでにカイロが手放せない状態だ。

「うん、大丈夫だよ」

「とうとう明日なのね」

「うん、わたし絶対合格するから」

「愛なら、大丈夫ね」

大丈夫。その言葉がどれだけわたしの救いになるか。

その分プレッシャーにもなるのだけど、でもやっぱり大丈夫っていわれるのは嬉しい。


「今日はトンカツにしようかと思うの。ほら、よくいうでしょ?受験に“勝つ”って」

「お母さん、そういうの信じてるんだ」

「もちろん。それにわたしのお姉ちゃんもそうだったから」

「・・お母さんが?」

「そうよ。わたしの高校受験のときも大学受験のときもお母さん・・愛のおばあちゃんに今日はトンカツにしてね!ってうるさかったのよ」

「そうなんだね」

わたしの知らない、本当のお母さんの話。

そんなお母さんはきっと、妹のことが大好きだったんだろう。
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