わたしの願い
*
「ただいま」
「おかえり。寒くなかった?体冷やさないようにね」
もう季節は11月。
ずいぶん肌寒くなり、すでにカイロが手放せない状態だ。
「うん、大丈夫だよ」
「とうとう明日なのね」
「うん、わたし絶対合格するから」
「愛なら、大丈夫ね」
大丈夫。その言葉がどれだけわたしの救いになるか。
その分プレッシャーにもなるのだけど、でもやっぱり大丈夫っていわれるのは嬉しい。
「今日はトンカツにしようかと思うの。ほら、よくいうでしょ?受験に“勝つ”って」
「お母さん、そういうの信じてるんだ」
「もちろん。それにわたしのお姉ちゃんもそうだったから」
「・・お母さんが?」
「そうよ。わたしの高校受験のときも大学受験のときもお母さん・・愛のおばあちゃんに今日はトンカツにしてね!ってうるさかったのよ」
「そうなんだね」
わたしの知らない、本当のお母さんの話。
そんなお母さんはきっと、妹のことが大好きだったんだろう。