わたしの願い

龍希side






愛が屋上からでていったあとも俺はここから動けなかった。

さっきまですぐ近くにいたのに、抱きしめていたときの感触がまだ残っているのに、愛はいってしまった。




愛の妹がはじめて俺のクラスに来た日、なんとなく抱えていることがわかった気がしていた。

きっと妹と比べられながら生きてきてつらかったんだろうなとか。



でも、球技大会の日、愛されてこなかったといった愛の気持ちなんて、正直俺はこれっぽちもわかってなかった。


俺が愛と呼んだときの驚いた顔。

まるで自分の名前を忘れていたかのような。


愛の目からあふれる涙をみたとき、俺はその小さい体を抱きしめていた。

< 74 / 309 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop