わたしの願い
*
「お母さん、いかないで」
小学生のころはそれでも母さんが好きで、変わってしまってもお母さんはお母さんだと思ってた。
「はなしてよ、うっとおしい」
でも母さんはもうあの頃の面影なんてひとつもなかった。
「お金、あげてるでしょ?文句ないよね?」
そういって母さんがでていく背中をみて俺は毎日泣いていた。
高学年になると、母さんが家に男を連れこむことが増えた。
俺が帰ってそこに鉢合わせると母さんは心底嫌な顔をした。
それが嫌で、俺は中学に入ると部活にはいって朝も夜も練習に励んだ。
休みのときや練習がはやくおわってしまったときに、家の明かりがついていると俺は帰らずにふらふら歩いた。