わたしの願い




「お母さん、いかないで」


小学生のころはそれでも母さんが好きで、変わってしまってもお母さんはお母さんだと思ってた。



「はなしてよ、うっとおしい」


でも母さんはもうあの頃の面影なんてひとつもなかった。



「お金、あげてるでしょ?文句ないよね?」


そういって母さんがでていく背中をみて俺は毎日泣いていた。




高学年になると、母さんが家に男を連れこむことが増えた。


俺が帰ってそこに鉢合わせると母さんは心底嫌な顔をした。



それが嫌で、俺は中学に入ると部活にはいって朝も夜も練習に励んだ。


休みのときや練習がはやくおわってしまったときに、家の明かりがついていると俺は帰らずにふらふら歩いた。



< 78 / 309 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop