ねぇ、僕じゃダメ?
風に乗ってフワリと甘い香りが近づいてきた。

桃田さんだ。

視線を泳がせた先に、顔の横で小さく手を振る桃田さんと目が合う。

「こんにちは。」

「こんにちは。モカちゃん、元気だったー?」

きれいな手がモカに優しく触れる。

「犬、好きですか?」

「うん、好きっ」

「、、、っ。」

「ん?どうかしたの?」

「い、いえ。」

好きって、、、好きって言った

今、好きって。

いや、犬だけど。

僕のことじゃないけど、好きって言ったときの顔が、、、破壊力抜群だ。

思わずドキドキしてしまった。

こんなの、心臓に悪すぎだ。

桃田さんの前では本当にただのヘタレに成り下がる。

いいとこなんて一つも見せれない。

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