未完成な好きが、恋に変わるまでそばにいて。
両親と別れてとりあえず教室に入るように促されて校舎の五階に向かう。
そして少し緊張したままE組の教室に足を踏み入れると、一瞬息が止まった。
視線の先に、見覚えのある顔があったからだ。
「海里くんだ……」
私より年上だと思っていたが、まさか同じだとは。
しかも同じ高校の同じクラスなんて、奇跡としか言いようがない。
それじゃあ彼は、中学生であれほどバスケがうまかったんだ。
彼とはあれからも数回、目が合ったことはあるけれど、近づいたことも言葉を交わしたこともない。
だから当然、お互いのことをくわしく知らない。
私はすぐに海里くんだとわかっても、あっちはそうじゃないかもしれない。
指定されていた席に座り、配られていたクラス名簿に視線を送る。
『二村(ふたむら)海里って言うんだ』
声に出さず、彼の名前を確認する。
それからずっとドキドキしていた。
すでに知り合いがいる人以外は、みんな席に座ってじっとしている。
だから私もそうした。