未完成な好きが、恋に変わるまでそばにいて。

私より一列うしろで、より窓に近い席の海里くんもボーッと物思いにふけっている。

しばらくして入学式のために体育館へ移動するように促されて立ち上がると、ついに彼と目が合った。


「あ」と小さな声を上げた海里くんは、どうやら私に気づいたらしい。
けれどそれ以上はなにもなく、離れて体育館へ向かった。


入学式の間も簡単なホームルームの間も、私の頭の中は海里くんのことでいっぱいだった。

バスケ部に入るのかな……。

あれだけの腕前なのだから、強豪私立高校からスカウトがあってもおかしくはないと思うけど、どうして並木高校に来たのだろう。


学費の問題?


でも……スポーツ特待生の制度で授業料半分免除なんてこともあるし、海里くんはそれくらいの実力はあると思う。

通っていた中学のバスケ部が弱くて、存在を知られていない?
もしくは、よほど並木高校に来たかったわけがあるとか?
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