未完成な好きが、恋に変わるまでそばにいて。
入学して三日目ともなると緊張感が薄れてきて、次第に友達の輪ができ始める。
しかし私はなかなか積極的になれず、その輪に入っていくことができなかった。
「白石さん、だよね」
昼休み。お弁当をひとりで食べ終わった頃に、話しかけられてうなずく。
「私、安藤(あんどう)知美(ともみ)。よろしくね」
「はい。白石梢です。よろしく」
初めて話しかけられて舞い上がり、頬が上気するのを感じる。
「ね、白石さんって、青葉(あおば)中出身なんだって? もしかして白石順平(じゅんぺい)くんってお兄さん?」
唐突に兄のことを持ち出されて、動揺が走る。
きっとバスケをしていたことを知っているのだろう。
兄は、将来を期待されるほどのちょっと有名な選手だったのだ。
だから私もバスケにくわしい。
「う、うん」
実は兄は、一年三カ月ほど前に事故で帰らぬ人となっている。
まだ兄の死を乗り越えたと言い難い今、話を振られるのはつらい。