未完成な好きが、恋に変わるまでそばにいて。
「白石さんのこと突き飛ばして自分は犠牲になったんでしょ? 最期までかっこいいよね。でも、期待の星だったのに――」
「お前さ、いい加減にしろよ」
するとそのとき、安藤さんを止めてくれたのは海里くんだった。
「な、なに?」
「亡くなった人のことをそんなにペラペラ話されてうれしいヤツがいるわけないだろ。しかも、そんなに軽く。コイツの気持ち、少しは考えろよ」
強い口調で安藤さんを責める海里くんは、突然私の手首をつかんで教室を飛び出した。
「えっ、ちょっ……」
戸惑ったものの、海里くんの足は止まらない。
私の右手首を強い力で握りしめたまま廊下をずんずん進む。
周りの人たちがポカーンと見ているのがわかったけれど、私にはなすすべがない
とはいえ、あのまま教室で安藤さんの話を聞いていたら絶対に泣いていた。
もう限界は目の前まで来ていた。
だから、こうして連れ出してもらえたことに感謝している。