新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「……礼?」
耳に届いた声に、ひとつまばたきをしてからそちらを向く。
傍らに立つ皐月くんが、心配そうな表情で私の顔を覗き込んでいた。
「皐月くん……」
「ごめん、ひとりにして。こわい思いさせた」
そう話す彼は、眉根を寄せて苦い顔をしている。
私はふるふると首を横に振った。
「ううん、平気。皐月くんが、きてくれたから」
笑ってみせると、皐月くんはホッとしたように肩の力を抜く。
「本当に、悪かった。……そろそろ、花火始まるな。ちょっと移動しても、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
「じゃあ、行こう」
こちらの返事を確認して歩き出した彼に続いて、足を動かした。
今、私の心臓が早鐘を打っている理由は、ときめきと……それから切なさが入り交じった複雑な気持ちがそうさせるのだと、知っている。
ついさっき蘇った、記憶の中。
皐月くんに手を引かれて歩いていた自分の姿をうらやましく思いながら、私は目の前の背中を見上げていた。
耳に届いた声に、ひとつまばたきをしてからそちらを向く。
傍らに立つ皐月くんが、心配そうな表情で私の顔を覗き込んでいた。
「皐月くん……」
「ごめん、ひとりにして。こわい思いさせた」
そう話す彼は、眉根を寄せて苦い顔をしている。
私はふるふると首を横に振った。
「ううん、平気。皐月くんが、きてくれたから」
笑ってみせると、皐月くんはホッとしたように肩の力を抜く。
「本当に、悪かった。……そろそろ、花火始まるな。ちょっと移動しても、大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
「じゃあ、行こう」
こちらの返事を確認して歩き出した彼に続いて、足を動かした。
今、私の心臓が早鐘を打っている理由は、ときめきと……それから切なさが入り交じった複雑な気持ちがそうさせるのだと、知っている。
ついさっき蘇った、記憶の中。
皐月くんに手を引かれて歩いていた自分の姿をうらやましく思いながら、私は目の前の背中を見上げていた。