新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
会場となっている河川敷沿いを10分ほど歩きたどり着いたのは、遊具やベンチがこじんまりと設置してある小さな公園だった。

皐月くんがベンチに敷いてくれたハンカチの上におそれおおくも腰を下ろしたそのとき、夜空に花火が打ち上がってあたりを照らす。



「わあ……っ!」

「よかった。思った通り、ここならよく見えるな」



言いながら左隣に座った彼に顔を向ければ、皐月くんもこちらを見て微笑んでいる。



「実際にここから見たことはなかったけど、穴場なんじゃないかと思ってたんだ。このあたりは民家も少ないし」

「そうなんだ……」



彼の話に言葉を返した瞬間、また次の花火が打ち上がる。

笑い合いながら、ときにはパチパチと手を叩いて歓声を上げながら、しばらく私たちは夏の夜空を彩る光の華を楽しんだ。

花火の合間にぽつりぽつりと交わす会話の中、ふとしたことから、話題が先ほど夜店の前で絡まれたときのものになる。



「本当にごめん。ああいう場所で、礼をひとりにするべきじゃなかったんだ。……指輪だってせっかくつけてもらってるのに、意味なかった」



私としては済んだことだと思っていたけれど、皐月くんにとってそうはいかないらしい。

ひざの上に置く私の左手に視線を落としてつぶやいたその言い回しに、なんとなく、不自然さを覚える。

けれど気のせいだということにして、私は苦笑しながらリングを撫でた。
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