新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
『宮坂も、俺のこと名前で呼んでくれてもいいけど』

『な……』



ボッと、顔が熱くなった。

ど、どうしていきなり、そんな話になるの?!



『よっ、呼ばないよ?!』

『そうか。残念だな』



残念……?! 越智くんがどこまで本気で言っているのかわからなくて、混乱する。

だけどこの表情は、きっとからかっているんだろう。うん、そうに違いない。

もう、と小さくつぶやいて、普段より熱のこもった吐息をこぼす。

ただ優しいだけじゃなく、彼にはこんな意地悪な一面もあったらしい。

同じ店舗で働いたことはなかったとはいえ、何度も研修や同期会で顔を合わせてはいたのに……今まで、知らなかった。



『じゃあ、そろそろ戻るか』

『……はい』



とっさに出たのは敬語だ。動揺している私にしっかり気づいているらしく、越智くんがまた笑った。

歩き出した彼の斜め後ろをついていく。

広いその背中をこっそり見つめる私は、どうしようもなく高鳴る胸を持て余して困り果てるのだった。
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