新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
花火大会の翌朝。
自室のベッドの中で目覚めた私は自分が泣いていることに気づいて、目もとを拭いながら上半身を起こした。
なんだか……懐かしい夢を、見た気がする。
たぶんそれは、実際に過去にあった出来事で。
そしてその記憶は自分にとって、とても大切な思い出だったはずなのに──どうしても、今まで見ていた夢の内容が思い出せない。
深く息を吐いてから、気だるい身体を動かしてベッドを下りる。
なんだか、頭が重い。そういえば、低気圧が近づいてきてるんだっけ。
ルームウェアを脱いで、白いレースカットソーとネイビーのテーパードパンツに着替える。
少し時間をかけて覚悟を決め、自室を出た。
「おはよう、礼」
締め切っていたリビングのドアを開けると、エアコンで冷えた涼しい空気が流れ出て肌を撫でる。
同時に、キッチンに立ってミネラルウォーターを飲んでいた皐月くんが、私の姿に気づいていつものように挨拶をしてきた。
一瞬、身体がこわばる。
けれども私はすぐに、笑みをみせた。
「おはよう皐月くん。早いね」
言いながら、ドアを閉めてリビングの中に入る。
彼はボーダーTシャツに黒のスキニーパンツといった格好で、すでに身支度を整えていた。
シンクにグラスを置いた皐月くんが、小さくため息をついてから答える。