新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「ふぅ……結構買っちゃったなあ」



ひとりごとを漏らしながら、片腕にひっかけたエコバッグを持ち直す。

結局ほのかたちの家に出かけることは諦めたものの、少し曇ってきて暑さのピークが過ぎた昼下がり、私はこうして近くのスーパーへとやって来ていた。

ぼんやりしながら店内を回っていたら、帰りの自分の負担も考えずアレコレと買い物カゴに入れてしまっていた。自宅までは徒歩なのに。

ひたいににじむ汗を手の甲で拭う。

つい先ほど皐月くんからスマホへ届いたメッセージには、【もうすぐ帰る】とあった。

もしかすると、私の方が遅く着いてしまうかもしれない。
家で「おかえりなさい」って迎えるの好きだから、先に帰ってたいんだけどなあ。

そんなふうに考えながら足を早めたとき、ズキリと一際鋭く頭に痛みが走って、その場に立ち止まった。

鎮痛薬を飲んではいるけれど、頭痛自体は今朝からずっと続いている。こめかみあたりを覆うように、空いていた手のひらをあてた。

これはまた……デジャヴを感じた脳が引き起こす、頭痛なのだろうか。

前にもこんなふうに、この道を、急いで歩いたことがある?

だけどそんなの、いくらでもありそうだ。となれば、ただ単に低気圧のせいか、暑さにやられてしまっただけかも。

心なしかいつもより熱い息を吐いて、また歩き出そうとしたときだ。

前方から歩いてきた男性が、私のすぐ目の前で足を止めた。



「もしかして、宮坂さん?」

「え?」
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