新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
どうにか謝罪してこの場を切り抜けねばと、口を開きかけた。



「あの、すみません私」

「なんだよ。散々その気にさせといていざこっちが付き合ってやろうとしたら別の男使って俺のこと拒否したくせに、そんなただのオモチャのことなんて覚えておく価値もないってか?」



……え?

さっきまでのにこやかな態度を豹変させ早口で捲し立てた話に、呆然とする。

『散々その気にさせといて』?
『別の男使って拒否』?
『ただのオモチャ』?

衝撃的すぎるワードが脳内をぐるぐる回って、私は言葉を失う。

なに、それ……“私”、そんなことしたの?

でも、そんなの、少なくとも今の私はできないし、するつもりもない。

私と“私”は、同じ人間なのだ。たった数年で、ここまで違う行動をするものだろうか?

押し黙って必死に返す言葉を考えていたら、突然二の腕を掴まれビクリと身体が震える。

思わず怯えた眼差しで見上げると、男性は妙に凄みのあるいびつな笑みを浮かべていた。



「ヒトのことコケにすんのも大概にしろよ。ちょうどいい、少し付き合ってくれよ」

「や……は、離して」

「ざけんな、逃がすわけねぇだろ」



掴まれた手にギリギリと力がこもり、痛みに顔を歪める。

持っていた重いエコバッグが地面に滑り落ちた。
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