新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「昨日連絡したときは、まだ怪我の程度もわかってなかったからな。すぐ飛んできたがったお義父さんたちには『心配だろうがひとまず待っていて欲しい』となんとか踏みとどまってもらった。さっきした電話も……礼が目を覚まして、大きな外傷もほとんどない状態でちゃんと話せてるということだけ報告しておいた。記憶喪失のことは、まだ言ってない」



目を丸くした。

それから深く安堵して、ほっと息を吐き出しながら思わず笑みが漏れる。



「ありがとう、越智くん。実家からここまで遠いし、記憶がないなんて言ったらきっとすごく心配かけちゃうから……助かったよ」



顔を見ながらお礼を伝えると、言われた越智くんは苦笑した。



「うん。そう言うと思ったから」



こぼれた小さな笑みに、ドキリと心臓がはねる。

彼は私のことを理解して、意にそぐわない状況にはならないよう、働きかけてくれていたのだ。

少なくとも、彼と“私”との間には、それだけのことができるようになるまでの時間というか、絆がある。

不意にその事実を見せつけられたようで、自然と胸が高鳴った。



「ほんとに……私と越智くんって、夫婦なんだね。正直まだ実感はないけど……なんとなく、納得はしてきたよ」



ポロリとそんなセリフが漏れる。

越智くんはつぶやいた私をじっと見て、それから「そうか」と小さくうなずいた。
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