新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
そして、3日後の水曜日。
職場であるカフェの定休日である今日、現在の私は、自室内をあちこち調べている真っ最中だ。
何か、この契約結婚の真相に迫る手がかりになるようなものがないかと思ったんだけど……そんな都合のいいものなんて、見つからないかあ。
作り付けの収納扉を閉めながらため息を吐いて、ベッドに腰かける。
平日だから、皐月くんは当然仕事だ。今朝もいつものように、玄関で見送った。
私たちの結婚が見せかけのものだったと知った、次の日からも……私は極力これまでと同じ態度で、彼に接することを心がけている。
だって、皐月くんは何も悪くないのだ。彼が契約結婚の話を黙っていたのは、ただでさえ突然の記憶喪失で混乱していた私を気遣ってくれていたから。
それなのにこちらがあからさまな戸惑いを見せて、これ以上心配や迷惑をかけたくない。……相手が好きな人なら、そう思うのはなおさらだ。
だけど、何事もなかったかのように振る舞うのはつらくて、とても疲れた。
これも全部……記憶が戻ったら、解決するのかな。
今私が持っている、皐月くんへの恋心は……すべての記憶を思い出したとき、どうなってしまうのだろう。
ふと、ベッドのそばにあるカラーボックスに目が留まる。
1番上の段には、数冊の本が収納されていた。どれも、バリスタの仕事に関連するものばかりだ。
けれどその中に、アンティーク風の分厚い洋書のような背表紙が混じっている。
インテリアのひとつかとも思ったけれど、なんとなく気になってベッドから立ち上がり、手を伸ばした。