新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「あれ……? これって……」



手に取った本を眺め、つい声を漏らす。

本物じゃない。これ、一見洋書の形をしてるけど中は空洞で、小物入れになってるんだ。

しかも、ご丁寧に鍵までついている。妙な予感を覚えて、自然と心臓が暴れ出した。

鍵……きっと、私なら……。

思いついて、服を収納しているチェストの1番下段を開けた。

下着ばかりしまっているその引き出しの奥の方に、小ぶりなベロア素材の巾着を見つける。中を開けてみれば案の定、焦げ茶色のタッセルがついた金属製の鍵が出てきた。

逸る気持ちでその鍵を小物入れの穴に差し込んでみる。

小さな『カチャリ』という音をたてて、何の抵抗もなく鍵は回った。



「……ッ、」



息を呑み、ゆっくりと表紙型の蓋を開ける。

中には白い封筒が1枚と、ハードカバーの手帳のようなものが2冊入っていた。

少し迷ってから、震える手で封筒を取る。

シールや糊で封はされていない。綺麗に折りたたまれていた便箋を広げた私は、目を見開いた。



「……“皐月くんへ”」



見慣れた自分の筆致で書かれた手紙。

その書き出しは、大好きな人の名前で始まっていた。
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