新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
(5):何度でも、あなたに
『──えっ?! 越智、あのめちゃくちゃかわいい彼女と別れたのか?!』
入行から約2ヶ月。
リーズナブルなチェーン居酒屋で初めての同期会の真っ只中、一際大きな声が耳に届いた。
声の主は、この団体客用の広い座敷に置かれた長テーブルの中央あたりに座る菊池くんだ。
右隣には越智くんがいて、何やら彼が菊池くん含む数名の男性たちに尋問されているらしい。
隠すことなく迷惑そうな顔をしているのが、少し離れた端っこにいる私からも見てとれる。
『なんでだよ、理由は? まだ付き合って半年も経ってないんじゃなかったか?』
『よく覚えてるな。まあ、いろいろあって』
『だから、そのいろいろが知りたいんだよ! イケメンの失恋話、酒の肴にさせろよ』
まだ付き合いは短いながらもあけすけな同期たちの言葉に、越智くんはさらに苦々しい表情だ。
そして、諦めたようにため息を吐いた。
『失恋って……まあ、振られたのは俺だな。結婚を催促するようなこと言うから「最初からソレはないって約束だろ」って答えたら、キレられてそのまま別れることになった』
投げやりな様子で答え、越智くんがジョッキのビールを呷る。
一瞬ポカンとしていた菊池くんだったけれど、少し遅れて『いやいや』と反応した。