新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
けれども不意に、ふっと頬を緩める。
『ありがとう、宮坂。宮坂は優しいな』
『えぇ? いやいやそんな、別に私は普通だよ』
ストレートな褒め言葉が照れくさくて、パタパタと片手を振りながら否定した。
だけど、うれしさに顔が自然とにやけてしまう。
はにかむ私から顔を逸らさず、越智くんは穏やかなその表情のまままた口を開いた。
『……俺さ、今までに4回、母親が変わってるんだ。今の“母さん”で、5人目』
『え……』
あまりにもさらりと落とされた重めな内容の告白に、一瞬固まる。
私の様子に構うことなく、淡々と彼は続けた。
『1番初めの離婚が幼稚園の頃で、今の母親に変わったのは院に進んだ年だったな。俺はずっと父親の方に引き取られてたから、苗字が変わったことはないんだけど……でもやっぱり、離婚とか結婚のたびに多少環境は変わるし、周りからも何か言われたり気遣われたりするし。俺にしてみれば、“結婚”は面倒で迷惑なものって悪いイメージしか、子どもの頃からなかった』
見たことがあるわけでもないのに、私の中に小さな少年だった頃の越智くんの、さみしげな背中が思い浮かんだ。
勝手に思い浮かべて……キュッと、胸が痛んだ。
『そんなだから、俺は結婚願望が全然湧いてこない。でもこれってたぶん、逆に結構面倒で、寂しい価値観なんだろうな』
そう話す彼は笑っている。だけど、どこか悲しげで、見ているこちらが切ない気持ちになる笑みだった。
『ありがとう、宮坂。宮坂は優しいな』
『えぇ? いやいやそんな、別に私は普通だよ』
ストレートな褒め言葉が照れくさくて、パタパタと片手を振りながら否定した。
だけど、うれしさに顔が自然とにやけてしまう。
はにかむ私から顔を逸らさず、越智くんは穏やかなその表情のまままた口を開いた。
『……俺さ、今までに4回、母親が変わってるんだ。今の“母さん”で、5人目』
『え……』
あまりにもさらりと落とされた重めな内容の告白に、一瞬固まる。
私の様子に構うことなく、淡々と彼は続けた。
『1番初めの離婚が幼稚園の頃で、今の母親に変わったのは院に進んだ年だったな。俺はずっと父親の方に引き取られてたから、苗字が変わったことはないんだけど……でもやっぱり、離婚とか結婚のたびに多少環境は変わるし、周りからも何か言われたり気遣われたりするし。俺にしてみれば、“結婚”は面倒で迷惑なものって悪いイメージしか、子どもの頃からなかった』
見たことがあるわけでもないのに、私の中に小さな少年だった頃の越智くんの、さみしげな背中が思い浮かんだ。
勝手に思い浮かべて……キュッと、胸が痛んだ。
『そんなだから、俺は結婚願望が全然湧いてこない。でもこれってたぶん、逆に結構面倒で、寂しい価値観なんだろうな』
そう話す彼は笑っている。だけど、どこか悲しげで、見ているこちらが切ない気持ちになる笑みだった。