新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
私は、両手で包むように持っていたグラスを強く握りしめる。



『……そうやって、自分の価値観を否定することないよ。越智くんは、越智くんの思うまま、自由に生きるべきだと思う』



じっと越智くんと目を合わせ、そう言った。

私の言葉に、彼がパチパチとまばたきを繰り返す。

それからさっきまでより表情を和らげ、また『ありがとう』とささやいた。



『宮坂は? 彼氏と、結婚の話はする?』



今度はこちらの番のようだ。

話を振られ、思わず苦笑する。



『私、今は彼氏いないんだ。でもうん、一応、将来的な結婚願望はあります』

『そうか。宮坂なら、きっといいお嫁さんになるだろうな』

『またまたぁ、そうやっておだてても、何も出ないよ? でも、ありがとー』



照れ照れと手もとにあるグラスを弄びつつ、酔いもあってかさらに饒舌に続けた。



『もし若いうちに結婚できたら、ウェディングドレスは真っ白でスカートがふわっふわなやつにするって決めてるんだ。あ、でも私キツめの顔立ちだから、たぶん似合わないんだけどね』



自分で言ってちょっと悲しくなりながらも、昔からこっそり抱いていたとっておきの夢を越智くんに打ち明けた。

彼は馬鹿にすることなく、あくまで真摯な態度を崩さない。
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