新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「礼、どうかしたか?」

「あ、ううん。なんでもないよ、越智く……えっと、皐月くん」



私が無言でまじまじと見つめてしまっていたからか、彼が腰を浮かせて心配そうに顔を覗き込んできた。

かっこいい顔面がすぐ近くにきて、ちょっとビビってしまう。それに、さっき聞いた話を思い出したせいで、名前を呼ぶのにも少しドギマギした。

素直に「そうか」と椅子に座り直した皐月くんの反応に、こっそり息をつく。



「そうだ、忘れるところだった。礼にお見舞い持ってきてたんだ」

「ん?」



ふと思いついたように言って、皐月くんが立ち上がった。

何とはなしに見つめる私の前で、彼は備え付けの小型冷蔵庫から白い箱を取り出す。



「さっききたとき、うっかり落としたんだよな……大丈夫だといいんだけど」



言いながらテレビが置いてある床頭台のテーブルを引き出し、その上に箱を置いた。

箱についたシールの文字が見えてしまった私は、思わずがばりと上半身を起こす。



「それ……っ!」

「あ、よかった。割れてなかった」



開いた箱の中を覗き込んでホッと息を吐いた皐月くんが、中身のひとつを持ち上げてみせた。



「今食べるか? プリン」

「食べるっ! わー! よだふく庵のだ!!」



彼が掲げ持つ瓶入りのプリンを凝視しながら、思わず弾んだ声を上げる。
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