新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
食器を洗い終え綺麗に片づけたキッチンで、ゆっくりと熱いコーヒーを淹れる。
もしかすると、自分が彼のために淹れるのはこれが最後になるかもしれないから、丁寧に丁寧に。
そうして注いだコーヒーの入ったマグカップをふたつ持って、リビングのソファに座る皐月くんへと近づいた。
「礼、話って?」
マグカップを受け取ってお礼を言うなり、彼が急いた様子で訊ねてくる。
私は微笑んで、皐月くんの隣ではなく、ローテーブル横のラグの上に腰を下ろした。
「すぐに伝えなくてごめんなさい。実は今日……記憶が全部、戻ったの」
「え?」
突然の告白に、彼は驚いて目をみはる。
そしてすぐさま訊ねてきた。
「それは……本当か? 身体は? 何ともないのか?」
「うん、平気。どこも痛くないよ」
笑みを浮かべて返した私に対し、皐月くんはしばし呆然としていた。
少しの間のあと、私を見つめたままポツリとつぶやく。
「そう、か……よかった。記憶が戻って……礼が無事で、よかった」
こんなときでも、彼は私の身の心配をしてくれる。
こういう人だから、好きになった。こういう人だから、記憶を失くしても、また恋に落ちた。
もしかすると、自分が彼のために淹れるのはこれが最後になるかもしれないから、丁寧に丁寧に。
そうして注いだコーヒーの入ったマグカップをふたつ持って、リビングのソファに座る皐月くんへと近づいた。
「礼、話って?」
マグカップを受け取ってお礼を言うなり、彼が急いた様子で訊ねてくる。
私は微笑んで、皐月くんの隣ではなく、ローテーブル横のラグの上に腰を下ろした。
「すぐに伝えなくてごめんなさい。実は今日……記憶が全部、戻ったの」
「え?」
突然の告白に、彼は驚いて目をみはる。
そしてすぐさま訊ねてきた。
「それは……本当か? 身体は? 何ともないのか?」
「うん、平気。どこも痛くないよ」
笑みを浮かべて返した私に対し、皐月くんはしばし呆然としていた。
少しの間のあと、私を見つめたままポツリとつぶやく。
「そう、か……よかった。記憶が戻って……礼が無事で、よかった」
こんなときでも、彼は私の身の心配をしてくれる。
こういう人だから、好きになった。こういう人だから、記憶を失くしても、また恋に落ちた。