新妻ですが、離婚を所望いたします~御曹司との甘くて淫らな新婚生活~
「……俺も、ずっと、言えなかった」
数秒重なった唇が離れ、未だ近い距離で呆ける私を見つめながら、皐月くんがささやく。
その顔は切なげに歪んでいて、さっきまでのこわいくらい鋭かった眼差しとは違った意味で、心臓をわし掴みにされた。
「礼の叶わない恋の相手は菊池だって、今までずっと思っていた。だから、俺がおまえに向けてる気持ちなんて、迷惑以外の何ものでもないと思ってた」
「え……」
「気づいたのは、菊池に彼女ができて泣いてるおまえを、抱きしめたときだ。このまま離したくないと思って、最初は、自分のそんな感情に戸惑った。20年以上俺の中にあった価値観が、こんなにあっさり覆されるのかって……驚いたし、単純な自分に嫌悪感すら抱いたから」
「だけど、」と、重ねた手をぎゅっと握りしめながら、彼が続けた。
「同期として礼と過ごしていくうち、そんな嫌悪感もだんだん融けていった。残ったのは、ただ、おまえが欲しくてずっと一緒にいたいと思う、馬鹿みたいに純粋で強烈な欲望だけだった」
まるで飢えた獣のような危うい熱を孕む瞳に射抜かれ、動けない。
信じられない思いで、私は皐月くんの告白を聞いていた。
「利害が一致するから結婚しようなんて、あんなのはただの建前だ。本当は、俺が誰よりも、おまえの近くにいたいだけだった。1番近くにいれば、おまえを傷つけるあらゆるものから、守ってやれる。おまえが笑ったり、泣いたり、怒ったりする姿を、そばで見ていられる。本当の意味で手に入らなくても、それでいいんだと、自分に言い聞かせてた。……でも」
そこで彼は、まるで長年の、ずっと心に秘めていた罪を懺悔するかのように、いっそう声を低くする。
「心の奥底では、もうずっと、限界だった。本当は全部俺の気持ちも欲もぶちまけて、ひたすらおまえを甘やかして、もう俺から離れられないくらいドロドロに依存させてやりたかった」
熱を帯びた瞳で不穏な言葉を吐きながら、どこか苦しそうな表情で微笑んだ。
私は息をすることすら忘れて、ただ、そんな彼に目を奪われる。
数秒重なった唇が離れ、未だ近い距離で呆ける私を見つめながら、皐月くんがささやく。
その顔は切なげに歪んでいて、さっきまでのこわいくらい鋭かった眼差しとは違った意味で、心臓をわし掴みにされた。
「礼の叶わない恋の相手は菊池だって、今までずっと思っていた。だから、俺がおまえに向けてる気持ちなんて、迷惑以外の何ものでもないと思ってた」
「え……」
「気づいたのは、菊池に彼女ができて泣いてるおまえを、抱きしめたときだ。このまま離したくないと思って、最初は、自分のそんな感情に戸惑った。20年以上俺の中にあった価値観が、こんなにあっさり覆されるのかって……驚いたし、単純な自分に嫌悪感すら抱いたから」
「だけど、」と、重ねた手をぎゅっと握りしめながら、彼が続けた。
「同期として礼と過ごしていくうち、そんな嫌悪感もだんだん融けていった。残ったのは、ただ、おまえが欲しくてずっと一緒にいたいと思う、馬鹿みたいに純粋で強烈な欲望だけだった」
まるで飢えた獣のような危うい熱を孕む瞳に射抜かれ、動けない。
信じられない思いで、私は皐月くんの告白を聞いていた。
「利害が一致するから結婚しようなんて、あんなのはただの建前だ。本当は、俺が誰よりも、おまえの近くにいたいだけだった。1番近くにいれば、おまえを傷つけるあらゆるものから、守ってやれる。おまえが笑ったり、泣いたり、怒ったりする姿を、そばで見ていられる。本当の意味で手に入らなくても、それでいいんだと、自分に言い聞かせてた。……でも」
そこで彼は、まるで長年の、ずっと心に秘めていた罪を懺悔するかのように、いっそう声を低くする。
「心の奥底では、もうずっと、限界だった。本当は全部俺の気持ちも欲もぶちまけて、ひたすらおまえを甘やかして、もう俺から離れられないくらいドロドロに依存させてやりたかった」
熱を帯びた瞳で不穏な言葉を吐きながら、どこか苦しそうな表情で微笑んだ。
私は息をすることすら忘れて、ただ、そんな彼に目を奪われる。